フジカST801のカメラ修理

今日はこれといいた記念日がない日なのですよね…
それならそれで…と過去の9月13日に
起こった出来事をいろいろと調べていると…
1932年に私の地元、呉市の鍋桟橋と
当時の安芸郡(現呉市)音戸町を結ぶ汽船が
沈没して死者・行方不明者29人となる事故が起きています。
今では考えられないことですが
定員23人の小型船に6倍近くの137人が乗ったことが原因だそうです。
今から91年前の出来事ですね…
まだ音戸大橋(1961年完成)もなくて船で渡るしかなかった頃です。
ちなみに鍋桟橋は私がまだごく幼い頃にはまだあったのですが
埋め立てられて桟橋はなくなり
地名と「鍋桟橋」というバス停だけが現在も残っています。
あのあたりもさらに随分と埋め立てが進んで
海岸線まではもう結構な距離がある地形になっています。
地元の風景も私が子供の頃に比べると
随分と地形から変わってしまっている部分も多いですね。
50年以上生きているとそう思うことも多くなってきました(苦笑)

さてさて

本日は「フジカST801」のカメラ修理を行っています。
1972年発売のカメラです。
この2年前にSTシリーズの最初のカメラとなる
「ST701」が発売になっていて
「ST801」は2台目のSTシリーズとなります。
「ST701」ではシンプルなねじ込み式の
ユニバーサルマウントでもある「M42マウント」だったのですが
この「ST801」では同時に発売した
開放測光対応レンズ(STマウント)との組み合わせで
開放測光に対応できるように変更されています。
物理的な取り付け部はねじ込みM42マウントなのですが
位置決めようのピンと絞り値伝達用の爪が追加となっています。
従来のフジカM42マウントレンズを装着した場合は
絞り込み測光で対応することとなります。
STシリーズは絞り込み測光機(従来のM42マウント)と
開放測光機(STマウント)が混在するので
少々ややこしいことになっています。
「ST801」は開放測光に対応しただけではなく
当時としてはまだ珍しかったファインダー内LED式の露出計を内蔵します。
さらに布幕横橋り機としてはこれも珍しい1/2000を実現しています。
当時横走り機で1/2000というとニコンF2やキヤノンF-1ですが
これらのフラッグシップ機は金属幕を採用し
機械的にも強度を上げ幕速を速くすることで
1/2000を達成しています。
それにたいして「ST801」は幕速自体は通常の布幕横走り機と
さほど変わりません。
とにかくスリットを狭くすることで1/2000を達成しています。
そのためかなり微妙なバランスの上に成り立っている印象です。

お預かりている「ST801」は
まずはその1/2000が完全に開いておらず一部で閉じてしまっているようです。
やはり精度を確保するには本来のスムーズな動作の上に
微妙な調整を行わなくてはならず
製造から50年以上経過していて未整備だと
まず精度は出ていない個体がほとんどかと思われます。
1/1000、1/500は開いてはいますが
やはり精度的には問題のある状態の上に
動作がかなり不安定です。
加えて露出計が大幅にアンダー傾向です。
ASA100・LV15でF16・1/2000で適正と出る状態です。
この指示に従うと4段ほどアンダーになってしまいますね…
さすがにネガだとしてもこれは写真がかなり暗くなると思います。

フィルム室のモルトは過去に交換歴がありそうですが
画像に写っている上カバー内側の干渉防止用のモルトや
他の内部モルトはやはりボロボロに劣化しています。
もちろん交換で対応いたします。
これから本格的に分解整備に取り掛かりますが
幕軸の汚れ等はもちろんですが
測定結果を見ていると調速カム周りにも問題がありそうなので
そのあたりも含めて入念に整備を行っていきます。
露出計は受光体等には問題はなさそうで
電気的調整で何とか精度を確保できそうです。

↓ をクリックすると「東京フィルムカメラ修理工房」のホームに戻ります。