日別アーカイブ: 2021年4月9日

ミノルタXEのカメラ修理

今日は「フォークソングの日」なのだそうです。
「フォー(four=4)ク(9)」という語呂合わせからですね。
フォークソング…明確な位置づけってまた少々微妙なのですが
いわゆるギター1本で弾き語るスタイルというイメージですよね
日本国内でのフォークソング全盛期って
1960年代後半から1970年代にかけてだと思いますが
さすがに私も幼過ぎてリアルタイムで
体感しているとはいえないですねぇ
私が歌番組見たりレコードを買い始めたのは
1970年代末あたりからですが
その頃には「フォークソング」というよりも
「ニューミュージック」と呼ばれる
これまた明確な位置づけの難しいジャンルが盛り上がっていて
いわゆるそれまでの「歌謡曲」以外は全て
「ニューミュージック」って枠に一括りにされていたような気がします。
ソンガーソングライターだったらニューミュージックとも
言われていた気もしますがそうとも限らないのですよねぇ
まぁ、なんにしても今となっては「死語」ですね(笑)
いわゆる典型的なフォークソングはあまりないですが
レコードやラジオを聴き始めた頃に手に入れたレコードや
エアチェックしたカセットなんかは未だに手元にあって
レコードは今でも聴けますがテープはダメになってもおかしくないので
大部分をデジタル化してiPODで今でも聴いています。
当時の音楽って遠い昔の記憶を思い出すためのトリガーになるのですよねぇ
そういうものを聴くと当時の空気感を少し思い出すことができます。

さてさて

これも70年代のカメラですね。
今日は「ミノルタXE」のカメラ修理を行っています。
デビューは1974年です。前年にXシリーズ最初のカメラでもある
「X-1」が発売され「XE」は「X-1」に続く中級機的位置づけで
発売されました。
「X-1」はミノルタとしては相当気合を入れたプロ用最高級機として
発売されたカメラですが個人的見解ですが正直に言うと
いろいろと「?」な部分もあり商業的にも
決して成功とは言えなかったと思います。
じゃ「XE」も「X-1」の普及版と考えれば
同じような感じなの?というとそんなことはなく
「XE」と「X-1」はキャラクターも全く異なりますし
構造的にも意外と共通点がありません。
まずシャッターが「X-1」の横走りに対して
「XE」は縦走りです。
この時代で縦走りシャッターと言えばやはりコパル製です。
それもただのコパル製ではなく
当時提携していたライツとミノルタ、そしてコパルの3社で
共同開発したライツコパルシャッターと呼ばれる
シャッターユニットが搭載されています。
「XE」のキャラクターはこのシャッターユニットで
大部分が決定されていると思われます。
このシャッターユニットはミラーチャージが独特な構造で
そのために非常に滑らかな巻上を実現しています。
さすがに登場してから50年近く経つカメラで
未整備のものは本来のフィーリングでないものも多く見かけますが
キチンと整備された「XE」は
非常に気持ちよい巻上を今でも味わえます。
言葉にするのは難しいのですが
単に「抵抗がなく軽い」ではないのですよね
巻上以外にも、さして明るくはないですが
ピントの山の非常に掴みやすいファインダー
ふわりと動く露出計指針、「X-1」とは異なり
一目瞭然で理解できるオートの設定等々
非常に使いやすい上に使い心地の良いカメラです。
短所をあげるとしたらやたら大きくて重いことくらいでしょうか…
ただ、初期の電子制御カメラということもあり
どうにも挙動が不安定で直らない個体も存在しますし
電子部品不良で全く制御ができない修理不可能な個体も存在します。
また持病であるプリズム腐食はプリズムが特殊な形状のため
交換用のキレイなプリズムの確保は既に非常に困難です。
現在、落ち着いて動作しているものは
ある意味、貴重かと思われるので大切にしてほしいと思います。

お預かりしている「XE」は基本的な動作自体は行えており
ファインダーも普通に覗いている分にはゴミの混入こそあれ
プリズム腐食は見当たりません。
ただ、ご依頼者からご指摘されているのは
巻上部の多重露光レバーが全く動かないということで
確認してみたところ確かにビクとも動きません。
こういう場合は力任せに動かすのは厳禁なので
後でしっかり分解して原因を確認していきます。
ここもトラブルの非常に多い露出計は
少しアンダー側に触れるもののネガであれば問題ないレベルです。
しかしながらこのアンダー側に振れるというのは
「XE」でよくある常に1/1000以上に振り切れてしまう…という症状の
前兆でもあるので原因となる巻き戻し側の摺動抵抗は
しっかり清掃整備しておかなければなりません。
シャッター自体の動きが一見問題ないように見えたのですが
測定器で計測してみると
1/1000は約1/400、1/500は約1/200…以下1/250は1/125
1/125は1/60と一段ずつズレてしまっているような状態です。
電気的な問題かとは思われ整備・調整で何とかなるとは思いますが
これもいろいろ整備をしながら確認していきます。

多重露光レバーはどうやら強烈に固着しているようです。
これから巻上側カバーも外していきますが
巻上軸周り整備の際に一緒に修理していきます。
これから基盤をよけておいてプリズムを降ろす手順なのですが
腐食の見えないプリズムは逆にプリズムを降ろすときに
非常に神経を使います。
…というのも腐食が見えないのはたまたまで
かなり実際は腐食が進んでいてプリズムを降ろした瞬間に
一気に蒸着が剥離してしまうことがあるからです。
腐食対策を行ってある個体などめったにないので
大部分がたまたま腐食がギリギリのところで
止まっているだけ…の状態かと予想されます。
とはいえ、プリズムを降ろさないとそれ以降の整備が進みませんし
ファインダーの清掃もできません。
慎重に慎重を重ねてこれからプリズムを降ろしていきます。
整備性の悪いカメラではないのですが
いろいろとトラブルも多く、整備修理も手間のかかるカメラです。
それでも調子のよい個体は非常に魅力的なことは間違いありません
あまりこればかり入ってくると閉口ものですが(苦笑)
たまに行う分にはしっかり慎重に整備していきたいと思います。

↓ をクリックすると「東京フィルムカメラ修理工房」のホームに戻ります。