月別アーカイブ: 2022年3月

キヤノン7のカメラ修理

今日は二十四節気でいうところの
「啓蟄」ですね。
この日になると随分春らしさも感じる頃になってきます。
大地が温まり、冬眠をしていた地中の虫が
春の陽気に誘われて穴から出てくる頃で「啓蟄」とされています。
「啓蟄」の「啓」には「ひらく、開放する」の意味があり
「蟄」には「虫が土の中に隠れる、閉じこもる」の意味があるそうです。
今日も都内は良いお天気で
気温も18℃くらいまで上がるようです。
夜、ウォーキングしていても
染みわたるような冷たさはめっきり感じなくなってきましたね。
いよいよ春本番です。
過ごしやすい季節が少しでも長く続いていくれればいいですね!
(近年はやっと過ごしやすくなってきたと思ったら
すぐに夏や冬になってしまうような気がするので…(苦笑))

さてさて

外は気持ちの良いお天気ですが
環退社もちろん店に閉じこもってお仕事しますよ(笑
本日は「キヤノン7」のカメラ修理を行っています。
1961年発売のレンズ交換式レンジファインダー機です。
戦前の「カンノン」から始まった
キャノンレンジファインダー機の集大成と言えるカメラです。
それまではローマ数字だったモデル名を
アラビア数字に改め「7」となりました。
距離計連動式35mm判カメラで
初めてシャッター速度と連動させた
セレン光電池式の露出計が組み込まれたカメラです。
ファインダーのブライトフレームは
35mm/50mm/85mm/100mm/135mmの5種類の枠を切り替えができます。
ねじ込みLマウント外周への外爪バヨネットの追加により
史上最高の明るさを持つ「キヤノンレンズ50mmF0.95」や
望遠レンズ用ミラーボックス2型を装着可能にしています。
機能面・スペック面で最高峰を謳う反面
「P」生産の頃から進められている生産の効率化による
コストダウンはさらに進み
50mmF1.8付きで46700円を実現し、
メーターと50mmF1.8を付属した場合の「P(ポピュレール)」の
53500円より廉価ともなりました。
これまでのレンジファインダー機で培ってきた実績もあり
「7」はキヤノンレンズ交換式レンジファインダーカメラ史上
最多の生産台数を記録し
国産レンズ交換式レンジファインダーカメラはキヤノンの独擅場となりました。
しかしながら国産メーカーで言えば
既に「ニコンF」は登場から数年経過しており
ペンタックスからはS2やS3がヒットしており
ミノルタからもSR-1,2が発売されて好調でした
この「7」のヒットにより
次世代一眼レフの開発には立ち遅れることになってしまいました。

非常に完成度の高いレンジファインダー機であることに
間違いはありませんが
さすがに登場から60年が経過し
経年劣化や長年の環境の差により
程度にもかなり個体差が出てきてしまっていると思います。
お預かりしている「7」は
保存環境は良かったものと思われますが
かなり長い間、眠っていたとみられ
あちこちに動作不良が出てきている状態です。
高速シャッターは全く精度が出ておらず
スローシャッターではガバナが粘っている状態です。
ファインダー内にはかなりのカビが見受けられ
距離計にズレも出ています。
セルフタイマーも油切れで動作不良となっています。
セレン光電池はやはり起電力に劣化が見られます。
起電を復帰させることはできないので
ここは表示板側でできる限りの調整を行い
通常の使用で問題ない状態にしていきます。
他はとにかく駆動部分を清掃してサビ・汚れを落とし
その後、最小限の注油を行い
調整を行う通常整備で何とかなると思われます。

…というわけで画像は一通り整備が完了した状態です。
駆動部分にかなり手を入れているので
新しい油が馴染んで動きが安定するまで少々様子見の段階です。
全体的に油切れと汚れで鈍重な動きだったイメージもなくなり
巻上もシャッター音もキヤノン機らしい
非常に軽快な動きになっています。
これであれば自信もって気持ちよく使っていただけると思います。
いい季節にもなってきましたが
快調な状態で春を写し込むのは
おそらく何十年ぶりなのではないかと思います
ご依頼者にもカメラにも日本の春を満喫していただきたいと思います。

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オリンパスペンFTのカメラ修理

今日は3月4日で「雑誌の日」だそうですよ
日付は「ざっ(3)し(4)」と読む語呂合わせですねぇ
昔はそれこそカメラ雑誌もそうだし
クルマ、バイク、模型…等々、毎月あるいは
マンガ雑誌まで含めれば毎週のように何かしらの
雑誌を買っていたけど
ネット時代になってからは本当に買わなくなりましたねぇ…
雑誌そのものも相当数が少なくなりましたし…これも時代でしょうねぇ
引っ越しとか大掃除の時に
大量の雑誌の処分に困るのですよね
今は知りたいことだけネットで調べて情報を得るって感じだし
電子書籍も含めて雑誌を読まなくなりました…
マンガだけは電子書籍も買いますが
気に入ったものは紙媒体も手に入れるようにしています。
まぁ古い人なので目に見える形で
傍に置いておきたいのですよね(笑
本屋さんに行くことも
めっきりなくなってしまいましたねぇ
ちょっと寂しいような気もします…

さてさて

本日は「オリンパスペンFT」のカメラ修理を行っています。
ペンFシリーズという括りであれば
毎月なんだかんだでコンスタントに修理を行っているカメラです。
その独特の構造が魅力でもあり弱点でもあるカメラですが
やはりミラー駆動及び巻上関連のトラブルの多いカメラです。
それでもその独特のスタイルや構造にまた
魅力が非常にあるのも事実で現在でも人気の高いカメラです。

ペンFTはペンFをベースに第三反射面をハーフミラー化し
その背後に露出計を内蔵し
さらに巻上をシングルストローク化
セルフタイマーを追加したモデルです。
セルフタイマーユニットが配置されたため
ペンFのトレードマークでもあった「F」の花文字が
なくなったのは少々寂しいですが
より実用的になったモデルと言えると思います。
今回、お預かりしている「ペンFT」は
その最大のセールスポイントでもある露出計が全く動かない状態です。
電池室は一見そこそこキレイだったのですが
分解してみると電池室からのリード線は腐食でボロボロで
ほぼ断線状態です。とてもとても電気が流れる状態ではありませんでした。
ボディ上部の基板までは何とか腐食は拡がっておらず
配線の交換のみで済みそうです。

ぺんFTの露出計受光部のハーフミラーも
蒸着があまり強くなく
ボロボロになっている場合が多いのですが
今回はそこは大丈夫そうです。
おそらく過去に一度、交換されているものと思われ
通常のハーフミラーとは異なるものが入っているようです。
露出計は1.5Vで設定をしなおして
問題のない精度も確保できています。
もちろん、配線交換時にミラーボックスは降ろす必要もあるので
トラブルの多いシャッターユニットや
巻上機構部、ミラー駆動部の整備も一通り行っています。
整備後はお預かり時に比べても
非常にスムーズに動作するようになっています。
しっかり手を入れればまだまだ使えるカメラですが
未整備品だと何らかのトラブルを抱えている事が
非常に多いカメラだと思います。
今回お預かりのFTは
これで当分、安心して使っていただけると思います。

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ニッカ5型のカメラ修理

今日は3月3日、いわゆる「ひな祭り」
「桃の節句」、「上巳(じょうし)」ですね
…とはいえ…子供の頃は一人っ子で
今もおひとりさまの私には
まーったく縁がない行事だったりします…(苦笑)
だから触れようがないのですねぇ…
じゃ、他に何かないの???と探してみたら
まぁ当たり前ですが「ひな祭り」に関連した記念日が多いのですが
その中に「三輪車の日」なんてのがありました。
今、考えると比較的坂の多い私の生まれ育った町では
なかなか危険だったとは思うのですが
幼稚園の頃に夢中になって乗った記憶が…(笑
あの時代ですから4~5歳児でも
割と家の外で一人で乗って遊んでたなぁ
あの小さな三輪車にちゃんと乗ってこぐことのできる時期って
意外と短くて自分が大きくなって乗れなくなっても
後ろのステップに立って下り坂で勢いよく乗ったりしていました
かなりボロボロになって捨てるしかない状態になるまで使ったなぁ…
そういえば…一応、三輪ですが
当時、黄色の「ローラースルーゴーゴー」にもよく乗ってたな…
こぐ部分のチェーンが割とすぐ壊れちゃって
切れたチェーンを引きずって走るただのキックボードになっていましたが…(笑

さてさて

本日は「ニッカ5型」のカメラ修理を行っています。
ニッカは戦前~1950年代にかけて存在したカメラメーカーで
いわゆる「ライカコピー」を作っていたメーカーです。
メーカー名の「ニッカ」は元々「ニッポンカメラ」で
カメラ名として「ニッカ」の名が使われており
1950年に社名も「ニッカカメラ」に変更されました
今回の「5型」は1955年に発売されたカメラで
このモデルからボディがダイキャストとなりました。
いわゆるバルナックコピーと言われるカメラですが
底蓋を外すと裏蓋が開けられる構造になっており
バルナックタイプのカメラならではの
フィルム装填の面倒さがかなり解消されています。
実はこれ、修理・整備する立場でも非常に便利な部分で
背面が開けられると分解しなくても
そのままシャッタスピード計測ができるのですよね!
これが例えばキヤノンのバルナックタイプだったりすると
モナカ状の外カバーは全て外さなくては計測ができず
且つその状態だとレンズが装着できず…
(当店のシャッターテスターはレンズを装着してSS計測するタイプ)
なかなかこれが大変なことになるのです…

お預かりしている「ニッカ5型」は定番のシャッター幕交換です。
厳密に言うとシャッター幕自体は以前に交換されいるようで
幕自体の状態はそれほど悪くないように見えたのですが
それでもシャッター幕がまともに走行できない状態です。
こうなるとどちらにしても幕を交換しなおして
設定も最初からやり直した方が無難なので
いつもの幕劣化の場合と同様に同様に
シャッター幕交換を行います。

で、シャッター幕を外して交換したのですが
幕の状態は見た目ほどよくはなく
布部分とゴム引き部分が剥離しているような状態でした。
剥がれたゴム部分が軸に付着して
幕が全く走行できない状態だったようです。
張り替えた幕の素材が悪かったのか
その後の環境が悪かったのか…
いずれにせよ現在は新品のシャッター幕に交換され
非常にスムーズにシャッターは動作しています。
精度も全く問題ございません

ニッカといえば純正で組み合わされるレンズは
通常、日本光学(現ニコン)のニッコールで
同じくライカコピーメーカーでライバルと言える
レオタックスカメラが東京光学(現トプコン)のトプコールを装着していて
ここでも「海のニッコー、陸のトーコー」のライバル関係が再現されていると
言われていました。
ですが…今回のニッカに装着されているのは後のニコンの
最大のライバルとなるキヤノンの沈胴型50mmF3.5が装着されています。
この時代のカメラはLマウントが主流ですので
いろいろな組み合わせが楽しめますね。
ハマると大変な世界ですが…
こちらのレンズもできる限りの清掃を行い
快適に使っていただける状態に仕上がっています。
これからボディと共に最終チェックを行って完成となります。

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