オリンパスOM-1のカメラ修理

今日は「トランジスタの日」だそうですよ。
1948(昭和23)年のこの日に
アメリカのAT&Tベル研究所の物理学者ウィリアム・ショックレー、
ジョン・バーディーン、ウォルター・ブラッテンの3人が発明した
トランジスタが初めて公開されたことが由来となっています。
いわゆる半導体素子の基本ですね
それまで主流だった真空管と同じく
増幅・発振・スイッチングなどの動作を行うことができ
真空管に比べて圧倒的に小型・軽量・長寿命で
消費電力が小さいなどの利点があり急速に普及して行きました。
現在使われる回路では集積回路(IC)の中に組み込まれていて
単体の電子部品として利用されることはほとんどなくなっているそうです。
CPUやMPUに内蔵されているトランジスタの数は増え続け
今ではひとつのチップに1億個以上のトランジスタが
搭載されている製品もあるそうです。
当店で修理しているカメラの中には単体のトランジスタを
搭載している電子制御カメラもありますが…
今では比べ物にならない程、複雑な集積回路になっているのですねぇ

さてさて

本日は「オリンパスOM-1」のカメラ修理を行っています。
上記のトランジスタ等を使う電子回路とは
正反対の機械制御シャッター搭載の一眼レフです。
露出計は電気回路ではありますが簡単な抵抗と電流計(露出計)のみで
構成されたシンプルなものです。
SSや絞りと露出計指針の連動は糸連動で
露出計本体そのものを回転させることで連動します。
ここにも電気的な連動はありません。
同時期の露出計には摺動抵抗を使って
電気的に絞り・SSリングと連動するものも存在しますが
どちらも一長一短あってどちらが優れているとも言えないと思います。
使う方にしてみればある程度の精度でちゃんと露出が
把握できれば十分なのですが
修理・整備する際にはこのあたりは結構重要な問題だったりします。
毎度のごとく書きますが35mm判機械制御シャッターの一眼レフで
この軽量コンパクトさを実現しているのはこのOM-1と
ペンタックスMXくらいしか存在しません。
特にOM-1は単に軽量コンパクトなだけではなく
上品なシャッター音やミラー駆動音
シャリシャリとした何とも言えず気持ちよい巻上、等々
その使い心地においても非常に魅力的なカメラです。

ただし、これも毎度書きますが
他メーカーがやらないような小型化を図っているだけに
現行モデルだった当時であれば問題なくても
登場から50年が経過する現在となっては
経年劣化により華奢な部分も出てきてしまっています。
デリケートな部分も多いカメラなので
定期的な整備が必須と言えるカメラだと思います。

お預かりしている「OM-1」はまずシャッターが全く切れません。
シャッター幕の状況から判断すると
シャッターはチャージ状態で
レリーズができない状態のようです。
こうなっていると外からな何もわからないので
まずは原因がわかる部分まで分解していきます。
分解に取り掛かるとその過程の中ですぐに原因はわかりました。
ミラーチャージロックの動作が悪く
チャージしてもロックされないようです。
そのため巻き上げてもシャッターはチャージされるのですが
ミラーがチャージされず
レリーズしてもミラーが動作しないので
当然シャッターも動作しないという状態になっていました。
ミラーボックスを外してチャージロック部、ミラー駆動部の
整備が必要です。
さらに応急処置でシャッターが切れる状態にして
確認してみるとシャッター幕軸の動きがかなり悪く
高速シャッターの精度は全く出ていない状態でした。
同時にシャッター幕軸の清掃整備も行っていきます。
当然、巻上機構やOMならではの底部三連ギアの
清掃整備も行っていきます。
露出計gは動作してはいるものの不安定且つ制度に問題ありなので
こちらも整備調整を行っていきます。

画像は一通り整備完了後のものです。
現在、テスト中ですが精度も含めて全く問題ない状態になりました。
独特のシャリシャリとした軽やかな巻上も
非常に気持ちよく行えます。
画像に写っている50mmF1.8レンズと
写っていないのですが135mmF3.5レンズも
できる限りの清掃を行いました。
コーティング劣化による若干のうす曇りは残りましたが
撮影にはほとんど影響ない状態かと思います。
これで安心してご依頼者様にも使い込んで行ってもらえればと思います。

↓ をクリックすると「東京フィルムカメラ修理工房」のホームに戻ります。