キヤノネットのカメラ修理

1月の晦日ですね。
今日の記念日は。。。
愛妻の日、五つ子誕生の日、生命保険の日。。。
うーん、ぼっち満喫な私にはピンと来ないものばかり(笑)
生命保険なんて全く必要のない若い頃に
何となく勧められて入ってしまったけどすぐ止めてしまったし
今や終身保険なんて全く必要ないし
がん保険は止めて数年経った頃に悪性リンパ腫になるし(笑)
今となってはいろいろあって医療保険は非常に入りにくいし。。。
やっぱり縁がないな(汗)
そういえば「愛妻の日」にちなんで
今日は「チューリップを贈る日」ともなっているのですが
偶然なのか今日の誕生花は赤いチューリップなのですね。
赤いチューリップの花言葉は「恋の告白」
これまた今となっては縁がない。。。(苦笑)

さてさて

本日は「キヤノネット」のカメラ修理を行います。
キヤノネットシリーズとしては色々なモデルがあり
最終モデルであるG-Ⅲあたりは
非常にコンパクトで今でも人気の高いモデルですが
今回のキヤノネットは記念すべき初代です。
35mm判カメラのその後を大きく変えたカメラと言って良いと思います。
それまでのキヤノンの主力は
いわゆる高級レンジファインダー機で
「P型」が比較的お求め易い価格だったとはいえ
それでもおいそれと手を出せるほどの価格ではありませんでした。
ただし、それはキヤノンに限らず
カメラそのものが非常に高級品且つ嗜好品であり
普通に買い求めることのできるものではなかった時代だったからです。
そんな中、レンズシャッター搭載の35mm判レンズ固定式中級カメラの
分野に初めて進出したカメラがキヤノネットです。
価格は当時としては非常に衝撃的な18,800円
お安いなりのカメラではなく
F1.9大口径の45mmレンズを搭載し
セレン光電池を利用した露出計+シャッタースピード優先オート露出
コパルシャッター搭載で最高速は1/500、スローシャッターももちろん搭載
さらにレンジファインダーを装備。。。等々
当時の最先端のスペックをひっさげて登場しました。
発売以前から2万円の大台を切るらしいと噂が経ち
カメラ業界からはかなり反発が大きかったそうです。
発売は1961年1月で発売当初、1週間分として生産されていた在庫が
わずか2時間で完売するという伝説も誕生しました。
もちろん社会現象になるほどの大ヒットとなり
2年半後に販売累計台数100万台を突破しました。
キヤノンにとっても記念碑的な1台だと思います。
この初代キヤネットの登場により
カメラの低価格化、高機能化についていけなくなった
かなりの数のメーカーが引導を渡されることになったそうです。

お預かりしているキヤノネットは
ご依頼者さまのご自宅で長らく眠っていたものらしく
保存状態は悪くないのですが
さすがに全く動かしていなかったため不具合はいろいろ出ています。
まずはシャッターが全く開きません。
レンズシャッターで定番の羽根固着です。
シャッター羽根が固着しているということは
オート制御のためさらに小さなバネ力で駆動する
絞り羽根は当然固着してしまっています。
心配されるセレン光電池はある程度起電しているようなのですが
露出計表示が非常に不安定で
同じ明るさでもレリーズボタンを半押しするたびに
ファインダー内の値がころころ変わります。
露出計が不安定というよりはファインダー内表示への連携が
上手くいってないように感じます。
他、レンズカビ、ファインダークモリ等々。。。
いわゆる経年劣化的トラブルが一通り出ている状態です。
逆に言えば致命的な部品破損等のトラブルは出ていないとも言えますね。

これから分解整備に本格的に取り掛かります。
当時としては価格破壊的なお値段で発売された初代キヤノネットですが
分解してみるとわかりますが
いわゆる安っぽい造りな部分は全くありません。
後の世のように部品材質や造りの簡略化でのコストダウンではなくて
あくまで生産を効率化することでのコストカットだったのだと思われます。
当時はまだまだそのあたりの効率化の余地は多くあったでしょうし。。。
指針挟み込み式のシャッタースピード優先AEですが
SS設定が露出適正範囲を超える場合は
しっかりシャッターロックもかかります。
ファインダー表示用指針との連携とシャッターロック制御の造りは
非常に考えられた構造になっており
ここの連携部の動きを観察するだけでも楽しいカメラです。

この時代ですから少し大柄ではありますが
シャッターボタンと筆記体のロゴだけの上カバー部は非常に美しいですし
トリガータイプの底面に配置された巻上レバーも秀逸です。

ただ、爆発的に売れたカメラの宿命というか
現存する台数も非常に多く
中古市場ではそれほど評価は高くなく
ちょっと可哀想な扱いになっていることが多い初代キヤノネットです。
年数が経っていますか現状そのままでは
撮影に使うのが難しいものが多いですが
しっかり整備すれば安定して動作し
非常に使い易いカメラです。
今回も快適に使っていただけるように整備していきます。