キヤノンFTのカメラ修理

今日は「東京の日」だそうですよ。
1868年(慶応4年)のこの日に
明治天皇により「江戸」が「東京(とうけい)」に改称されたのだそうです。
最初は読みが「とうけい」だったのですね。
当時は戊辰戦争の真っただ中で遷都そのものは反対もあり見送られ
正式に首都になったのは廃藩置県が行われた
1871年(明治4年)のことなのだそうです。
ちなみに「東京都」になったのはさらにずっと後で
太平洋戦争中の1943年(昭和18年)なのだそうです。
今は特に毎日全国的に話題に事欠かない東京ですが
やはりこれだけ人口が集中しているというのは
長所短所ありますよね。。。
私なんかはその長所にかなり恩恵を受けているほうだと思います。
この仕事をやる上で正直な話、東京以外では
相当今より苦しいことになると思います。
これだけ人がいるから今となっては少数派のフィルムカメラ使いの方が
それなりにいらっしゃって
フィルムの需要や現像の需要があり
私のような修理屋も
何とかやっていけているのですよね。
生まれ育った地元や、あるいはもっと他の地方で
少しのんびり開業することも
ほんの少しは考えたのですが
いくらネットが発達して宅配便等で仕事が受けられるとしても
やはり実店舗が都内の比較的アクセスの良いところにないと
話にならない。。。と開業当時は考えたのです。
まぁそれはそれで正解だったとは思いますが
意外と楽ではありません。。。(笑)
仕事だけではなくて
カメラや写真趣味の方にはもちろんですが
何かしらちょっとディープな趣味を持っている方なら
やはり東京は非常に楽しい街です。
いくらネットショッピングが発達しても
やはりお店でいろいろなアイテムを見られるのは
それだけでも非常に楽しいですものね!
あぁ。。。早く落ち着いた日常に戻ってほしいものです。。。

さてさて

本日は「キヤノンFT」のカメラ修理を行っています。
以前は圧倒的に「FTb」の修理が多かったのですが
最近は「FT」の修理依頼も多いような気がします。
1966年発売のカメラで
FLマウントを採用している「Fシリーズ前期」を
代表するカメラだと思います。
シャッターの構造は基本的には「Fシリーズ」全体で
ほぼ同様です。F-1もFTからの発展形と言ってよいと思います。
もちろん最高級機は構造は同じでも
部品の精度や質が異なるのですが。。。
TTL測光機でキヤノンお得意の中央部部分測光は
このFTから始まりました。
コンデンサレンズの中にハーフミラーを国込み
ファインダー中央部12%部分のみの光を
コンデンサレンズの真後ろにあるCdSに導く
独時の構造です。この構造は後のFTbやF-1にも受け継がれます。
その反面、まだレンズ側が絞り情報伝達機能を持たない
FLレンズのため測光は絞込測光で行います。
絞込レバーが露出計のon/offも兼ねて機能します。
この時期のキヤノン機といえばフィルム装填時の
「クイックローディング」も売りの一つですが
FTにももちろん装備されボディ前面には「QL」の文字が
誇らしげに配置されています。
モデル名も正式には「FT QL」だったかと思います。

お預かりしているFTは
シャッターは動作しているのですが
その動作音がちょっとひどいです。
シャッターの動作不良を起こした「Fシリーズ」特有の
高周波の耳障りな音が混じった「ギャン」といった感じの音です。
当然、シャッターはまともに精度は出ておらず
1/1000、1/500、1/250ではシャッター開き切りません。
1/1000は全く開きません。当然これで写真を撮っても真っ暗です。
横走りシャッター機ではありがちなトラブルですが
キヤノンFシリーズの場合はシャッター音に
わかりやすく出る場合が多いので
測定機にかけなくてもある程度予想がつきます。
FXでもF-1でもEXシリーズでも同様です。
幕軸や調速カム、幕ブレーキ付近の汚れや
油切れによる動作不良が原因です。
本来の調子であればこの時代のキヤノン機は
非常にアタック音の強く歯切れのよい
「カコン!」というシャッター音がします。
音量は大きめですが気持ちの良い音です。
なかなか実際に聴いてみないと伝わりませんが。。。(苦笑)

露出計周りは一応動作していますが非常に不安定です。
バッテリーチェックは全く作動しません。
SW周りの接触不良だと思われます。
で、お決まりのプリズム腐食もございます。
まぁどれも想定内のトラブルなので粛々と直ししつつ
一通りの整備を行っていきます。
ところでFTは絞込測光なので
FTbやF-1と違って動く〇指針はなく
露出計の本体の指針のみがSSと光の強さに連動して動きます。
で、〇指針の代わりに固定の〇マークがファインダー内にあり
そこに指針を合わせる方法で露出を合わせます。
その〇マークは単純にコンデンサレンズ表面に
プリントされたものです。
気を付けなくてはならないのがコンデンサレンズを清掃するときに
いつものように溶剤で拭いてしまうと
〇マークが消えてしまいます。非常に注意が必要です。
以前見た分解品のFTにはコンデンサレンズ上に
マジックか何かで丸が手書きされているものを見たことがあります。
失礼ではありますが思わず笑ってしまいました
無警戒に清掃すると簡単に消えてしまいます。
それぞれの機種で警戒しておかないといけない部分があるので
やはりこういう部分は経験値が必要かとも思います。

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