ペンタックスSVのカメラ修理

今日は「春一番名づけの日」なのだそうです。
何のことかと思ったら
「春一番」という言葉が初めて使われたことを
記念した日なのだそうです。
そもそも春一番とは冬の北風とは逆方向で
その年に初めて南から吹きつける強風のことです。
「その年に初めて」とはいいますが
通常、立春から春分の間にかけて吹く南風のことですね。
立春直前に全国的に南風が吹き気温が上昇した年もあったのですが
立春の前であったために
定義上、気象庁はこの風を「春一番」と認めなかったこともあるそうです。
なかなかその辺の判断は微妙ですよねぇ
人間が決めた定義とは関係なく自然現象は起きるものですし。。。
ちなみに今年の関東地方は2月4日、
立春の翌日に既に「春一番」が観測されています。
(今日現在、関東以外ではまだ観測されていません)
ここ数日また暖かくなってきましたし
このまま一直線に春に向かってほしいものです。

さてさて

本日は「ペンタックスSV」のカメラ修理を行っています。
いわゆる「アサヒペンタックス系」のカメラの末裔にあたります。
(SPまで含むかどうかいろいろ考え方はあるのですが…)
ここでいう「アサヒペンタックス系」とは
ペンタックス最初のカメラでもある「アサヒペンタックス(AP)」を
ベースとする一眼レフカメラです。
1964年に登場するTTL露出計搭載の「SP」も同じ系列ではあるのですが
「SP」は「SP系」として別に考えるほうがしっくりくる気がします。
(SPで内部構造もかなり変更されましたし)
今回の「SV」はアサヒペンタックス系の最終機といっても良いと思います。
正確に言うとSVよりも「S2スーパー」の方が後に登場するのですが
「S2スーパー」は「S2」を名乗りますが実際は「SV」から
セルフタイマーを省略したモデルです。
「SV」はその前身となる「S3」の後継機で
「S3」で実現した完全自動絞り機構に加えて
セルフタイマーと自動復元型フィルムカウンターを装備したものです。
機能的に追加されたのはその二つですが
ミラー駆動部やファインダー等、内部機構もかなりリファインされており
露出計を装備していないこと以外は
その後、数十年続くMFマニュアルカメラとしての基本的機構を
全て備えているカメラです。
つまり普通に70~80年代のマニュアルカメラが使える方ならば
それほど違和感なく使えるカメラになっているということですね。
(これ以前のアサペンだと半自動絞りだったり
カウンターは自動復元でなかったりとそれなりにひと手間と
慣れが必要かと思われます)
SVの「V」はセルフタイマーを意味する”Voraufwerk”の頭文字ということです
この時代のカメラにはSV以外のレンズシャッター機等でも
セルフタイマーレバー部によく「V」と刻印されてあります。
ただ、SVのセルフタイマーは非常にわかりにくい場所に設置されています。
通常、一眼レフのセルフタイマーというと
ボディ前面の目立つところにレバーがありますが
SVのセルフタイマーは巻き戻しクランク下がダイヤルになっていて
それをグルンと回転させてセットします。
これ、予備知識として知ってないとなかなかわからないと思います。

前置きが長くなりましたが
「SV」というか「アサヒペンタックス系」(SPより前)のモデルは
みんなそうなのですがシャッター幕が劣化・硬化していて
シャッターがまともに動作しない、あるいは動作していても
とてもとても正常にシャッターが走行できず
全くシャッタスピードの精度が出ない…という状態の個体が非常に多いです。
経年劣化なので仕方がない部分ですね。
シャッター幕の素材はいわゆるゴム引きで
布幕にゴムの層が組み合わされており
このゴムの層があるのでしっかり遮光できるわけなのですが
そのゴムが劣化してドロドロになったり
その後硬化して波を打ってしまっている状態になったりします。
今回のSVもシャッター幕がガチガチに硬化しており
特に後幕にいたってはシャッターをリリースしても
シャッター幕が走りだせないような状態でした。
シャッター幕交換は重整備ですし工賃もかなりかかりますが
ゴム引きのシャッター幕はやはり消耗品です。
今回のようにシャッターがまともに動作できないものに関しては
目に見えて交換が必要ですが
環境や個体差もありますが50年以上経過しているものは
やはり交換も考えなくてはならない状態になっていると思います。
ただSVはまだ比較的シャッター幕交換がやりやすいカメラで
それ以外の部分もシンプルで丈夫であるがために
シャッター幕を交換して各部の整備を行ってしまえば
また当分の間、安心して使える状態になるカメラだと思います。

画像は一通りの整備が完了後のものです。
黒のSVはちょっとレアですね。文句なしにカッコ良いです。
交換前のガチガチに硬化して波打ったシャッター幕に比べると
新品のシャッター幕のしなやかさは別次元のものです。
当然、スムースにシャッターは動作しており
他部分の整備も行っているので
巻上も軽く非常に気持ちの良い感触で
シャッター音も非常に上品な良い音になっています。
でもあくまでこれが本来の姿にかなり近い状態です。
(完全な新品になるわけではないので
完璧に本来の姿とはいいませんが)
SVは中古カメラ店とかに行くと
ジャンク箱の常連だったりすることも多いのですが
本来はこんなに使って気持ちよいカメラだということを
せめて今所持している方には知っていただきたいとは思います。

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