ペンタックスSPFのカメラ修理

今日は「ザリガニの日」だそうですよ。
1927(昭和2)年のこの日に
神奈川県の養殖業者により
アメリカ・ニューオーリンズから
アメリカザリガニが持ち込まれたことが由来になっています。
当初は食用カエル(ウシガエル)の餌として持ち帰ったもので
アメリカで出荷された際は100匹であったが
無事に日本に到着したのはわずか20匹だったのだそうです。
そのアメリカザリガニが養殖池から逃げ出し、
その後、爆発的に広まったとされています。
1960(昭和35)年頃には九州でも確認されるほどになり
現在では沖縄を含む日本各地で確認され
国内では最もありふれたザリガニとなっています。
私も子供の頃、ザリガニ釣りに近所の池によく行ったなぁ
煮干しを凧糸でくくりつけておくだけの仕掛けで
おもしろいよに釣れるのですよねぇ
たくさん釣ってもしかたがないのですが…(苦笑)
少々水が汚いところでもたくましく生きるのですよねぇ
ウシガエルもそうですがあまりにも増えすぎて
「日本の侵略的外来種ワースト100」に選定されています。
そういえば厚木に住んでいた頃は
この時期になるとウシガエルの大合唱が毎夜響き渡っていたなぁ…

さてさて

本日は「ペンタックスSPF」のカメラ修理を行っています。
1973年に発売されたカメラです。
前モデルであり大ヒット作である「SP」の改良機でもあります。
基本的な機械的な機構は「SP」のそれを引き継いでいますが
マウント内径部のねじの奥端1mm部に
対応レンズ用の回転式絞り値伝達レバーを設け
また対応レンズ側に”定点”を設け
ボディ側に設けられた定点受けの可動によって位相を検出し
絞り値の正確な伝達を可能としました。
この機構に対応したのがSMCタクマーレンズであり
これにより開放測光を可能としたカメラです。
従来のM42レンズやスーパータクマーレンズ使用の際には
「SP」と同様に絞込測光で対応可能です。
さらに新機能としては「フォトスイッチ」と呼ばれる
SW機構を搭載しレンズキャップをして
光がファインダー内に入らないようにすると
自動的に露出計の電源が切れる機能を搭載しています。
簡単に言うと露出計用のCDSとは別に
フォトスイッチ用のCDSを搭載し
そこに光が当たらないと抵抗値が大きくなり
露出計に通電しなくなる仕組みです。

お預かりしているSPFは露出計もシャッターも一通り作動していますが
露出計は少々オーバー目にズレていて
高速シャッターの精度はイマイチです。
加えてファインダスクリーンに目立つ傷もあり
プリズムにはわずかに腐食も見受けられます。
今回はご依頼者様から部品取り用の個体も提供いただいていて
そこからプリズム・スクリーンを移植します。
この時代の一眼レフなので
スクリーン交換はミラー側から簡単にとはいかず
プリズムを降ろしてファインダー枠も取り外さなくてはいけません。
整備一式でいずれにせよ取り外すのでその際に交換します。

SPは露出計回路も非常にシンプルなものでしたが
SPFはなかなか複雑な回路となっています。
開放測光に対応するため、
絞り側からの情報を必要とするためですが
それに加えてSPFの露出計は負荷のかからないときに
指針が真ん中にあり、CDS経由での電流と
絞り・SS情報からの電流で引っ張り合うような構造なので
回路も少々変わった構造となっています。
後のKXよりも回路的には少々ややこしいものになっています。
ただカメラとしては非常に完成度も高く
後のKシリーズでもマウント以外の機能をほぼ引き継いで
「KM」として生まれ変わっています。
露出計回路以外は「SP」でもはや完成された構造なので
非常に整備性もよく
キチンと整備すれば安定した動作が復活します。

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キヤノンF-1のカメラ修理

今日は「エベレスト日本人初登頂記念日」だそうです。
日付は登山家・松浦輝夫と冒険家・植村直己が
標高8848mの世界最高峰の山「エベレスト」に
日本人として初めて登頂に成功した1970年(昭和45年)5月11日から。
エベレストは今やお金さえしっかり出して
(かなり高額ですが…)
登頂可能なだけのトレーニングがクリアできれば
ガイド付きで誰でもチャレンジできる山になってはいますが
標高8000m超の世界はそう簡単に挑戦できる領域ではないですよね。
酸素は地上の1/3で通常、人は生命を維持することができなくなります。
長く滞在することで身体機能や意識の低下をもたらし最終的には死に至ります。
そこは「デス・ゾーン」と呼ばれる死の世界だそうです。
標高8848.86 mは想像を絶する世界でしょうね。
でも8kmなんですよね。
平地で水平に移動するだけなら普通に歩ける距離です。
いや水平距離と標高じゃ全く比較できないのはわかっていますが
人間が住むことにできる領域って
ものすごく上下に薄いんだなぁ…と思います。
ちなみにどこまでが空でどこからが宇宙かというのは
いろいろな考え方や諸説あるのですが
一般的なのは地表から100kmまでと考えるそうです。

さてさて

本日は「キヤノンF-1」のカメラ修理を行っています。
F-1もコンスタントに修理依頼のあるカメラですが
ここ最近、マイナーチェンジ後の「F-1N(後期モデル)」が
多かったのですが
今回はヒサビサに前期モデルです。
基本的な構造は前期F-1もF-1Nも大きな違いはありませんが
デザイン的な箇所から機能的なことまで
細かい仕様変更は十数か所にも及びます。
個人的にこれは大きな違いかな…と思うのは
やはり巻上角の変更かと思います。
F-1はキヤノンとしては初のプロ仕様の一眼レフなので
耐環境性能もかなり重視されています。
いえ、冒頭でエベレストの話が出たこともあって
思い出しただけなのですが
F-1もマイナス30℃から60℃までの温度域に耐えられるように
造られています。
もちろん新品時の場合ではありますが…

お預かりしている「F-1」は
やはりかなり長い間眠っていた期間もあったとみられ
全体的に動きに問題がある状況です。
まず、シャッターは動作はしていますが
1/2000、1/1000では全く開きません。
先幕と後幕の幕速バランスが大きく崩れており
高速シャッター時には後幕が先幕に追いついてしまう状態です。
幕軸の汚れや油切れが原因かと思われます。
低速シャッターは低速シャッターで
スローガバナの粘りが見られます。
こちらも汚れや油切れですね。
露出計も動作はしていますが
それなりに狂いも出ています。
やはり全体的に整備が必要な状態です。
ただし、どこかが破損しているとかの
大きなダメージはない状態なので
しっかり整備して動きを良くしてやれば
あとは微調整で本来の姿に戻ると思われます。

装着されているレンズは当店のテスト用レンズです。
一通りの整備が終わって少し新しい油が馴染むまで
様子見をしている状態です。
高速シャッターから低速シャッターまで
全く問題なく精度も出ています。
もちろん露出計も同様です。
F-1やFTbは幕ブレーキに問題を抱えている個体が多く
それが原因で幕のバウンドが起きている個体も多いのですが
今回はバウンドこそなかったのですが
やはり幕ブレーキには少々問題があり
できる限りの整備と調整を行っています。
F-1はこの幕ブレーキが少々泣き所ですね…
部品の精度や堅牢性はさすが最高級機で
やはり他のクラスのカメラよりワンランク上と言えると思います。
でも何とってもF-1は文句ナシに
めちゃくちゃカッコいいですよね。

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ペンタックスKXのカメラ修理

今日は「アイスクリームの日」だそうですよ。
幼い頃からじじいになってもアイスクリームは
ご馳走だし大好物ですよねぇ
ちなみに日本初のアイスクリームと言われている
明治時代の「あいすくりん」は
一人前の値段が2分(現在の価値で約8000円)と
めちゃくちゃ高価なものだったそうです。
さすがにそんな時代は体験していませんが
子供の頃に連れて行ってもらった喫茶店かどこかで
食べたアイスクリームは美味しかったなぁ…
あの時代ならではの足の付いたガラス容器に
丸みがかった四角いスプーン
そしてアイスクリームが丸く盛られ、
ウエハースが付いていて、さくらんぼが乗っている
まさにあの時代の典型的な「お店のアイスクリーム」です。
近所のスーパーで手軽に買えるアイスは
いわゆる「ラクトアイス」ばかりで
あの濃厚で本格的なアイスクリームは感動モノでした
で、そのうち、我が家にも当時の高級アイスクリームの代名詞
「レディボーデン」が冷蔵庫に常備されるようになり
「少しずつしか食べちゃダメ!」と言われながら(笑
自宅でも本格的アイスクリームが味わえるようになったわけですねぇ
また懐かしいことをいろいろ思い出してしまいました…(苦笑)

さてさて

本日は「ペンタックスKX」のカメラ修理を行っています。
ペンタックスKシリーズの中核を担うモデルです。
「Kシリーズ」はそれまで採用していた「M42マウント」と決別し
独自の「Kマウント」を初めて採用したシリーズです。
トップモデルの「K2」は全てにおいて新設計された
縦走りシャッター搭載の電子制御機ですが
正直、今となってはメンテナンス性にかなり難のあるカメラです。
中級機クラスの今回の主役でもある「KX」は
基本的な機械部分構造は以前の「SP」のものを引き継いでいて
動作的には非常に信頼できる造りです。
それに加え、最新のSPDによる露出計に
二針式で非常に見易いファインダー内情報、(絞り値も直読式で表示)
銀蒸着のペンタプリズム、ミラーアップ機構など
機械制御フルマニュアル機として
必要な機能をほぼ全て網羅しています。
余談になってしまいますがもうひとつの普及クラスのモデル「KM」は
以前の「SPF」をそのままKマウント化したようなカメラで
「SPF」の大きな特徴でもあった「フォトスイッチ」まで
そのまま搭載されています。
従来のユーザーが使い方そのままに乗り換えられるように
考慮されたカメラなのだと思います。
こう見てみると「Kシリーズ」の中で最も使い勝手がいいのは
個人的には文句ナシに「KX」ではないかと思われます。

お預かりしている「KX」は
随分長い間、使われず仕舞い込まれていた個体かと思われます。
全体的に動きが重い印象で
実際にシャッター幕軸やミラー駆動部には古い油や
蓄積された汚れがかなり動きを邪魔していると思われます。
高速シャッターの精度は全く出ておらず
1/1000は全く開きません。1/500で何とか1/4くらい開く感じです。
1/250だと一応開きますが写真の両端でかなり露光差が出ています。
駆動部分を徹底的に清掃した上で調整する必要がありそうです。
そして「Kシリーズ」でもSP系同様に定番の
「プリズム腐食」が出ています。
SP同様にプリズムに遮光材をぐるりと巻いているため
ここの加水分解を原因に蒸着が剥がれてしまいます。
SP系同様にファインダー内では中央少し下部分横方向に
黒い帯が出てきてしまっています。
これはプリズム交換で対応いたします。

SP時代からファインダー周りには
やたらと遮光用モルトが多用されていますが
内部モルトはKシリーズになってさらに増えています。
Mシリーズになるともっと増えてしまうのですが…
これはもうペンタックス機の特徴ですね…(苦笑)
画像にも写っていますが
上カバー裏には巨大な座布団モルトが貼られています。
基板と上カバー部の干渉を防ぐものと思われますが
これが劣化してくると基板に緑青が発生し
基板トラブルの原因になってしまうのです。
今回もトラブルが起こるほどではないですが
基板にも悪影響が出ていました。
もちろんここも交換で対処します。
ボディの大きさにまだ余裕のある時代のなので
整備性は悪くありませんし、
しっかり堅実に造られた良いカメラです。
キチンと整備して安心して長く使っていただきたいと思います。

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ペンタックスSLのカメラ修理

今日は「母の日」であるのは
だれもがご存じだと思いますが
それと同時に「紙飛行機の日」だったりします。
小学校低学年くらいまでは
良く作ってよく飛ばしましたねぇ
新聞の折り込みチラシで毎日のように作ってました
もちろん最初はじいさんに折り方を教えてもらいながらでしたが
かなり夢中になって作った覚えがありますねぇ
最初に作ったのはいわゆる「へそひこうき」でした
(こう呼ぶのを今回初めて知りました!)
この「へそひこうき」って大抵の場合
くるんと1回転するんですよねぇ~それが楽しかったなぁ
で、遠くに速く飛んでいく「やりひこうき」や
滞空時間の長い「いかひこうき」なんかをよく作りました…
で、今回これを書くために確認や名前を調べるために
「かみひこうき」について少し調べたのですが
私が知っているよりもたくさんの種類や折り方があって
ちょっと感動モノでした(笑
仕事の合間の気分転換にちょっと折ってみます!

さてさて

本日は「ペンタックスSL」のカメラ修理を行っています。
大ヒットした「ペンタックスSP」から
TTL内蔵露出計を省略したモデルです。
この時代にはまだ新機能であった内蔵型露出計を
敬遠するユーザーも多く
各メーカー、露出計内蔵のモデルと基本的には同じモデルで
露出計を省略したモデルを併売していることも多かったのです。
理由としては「実績のないカメラ内蔵露出計を信頼できない」とか
「多機能化による故障要因の増加を嫌う」なんてパターンですね。
気持ちはわからなくはないですよねぇ
前者は特に複数ボディを使いたい場合に切実だと思うのですが
この時代だと内蔵露出計によって特に視野内で輝度差が大きい場合に
その露出計によってクセというか出す値に傾向みたいなものがあって
特にデリケートな露出を必要とするポジだと
見逃せない問題になってきます。
それだと使い慣れてクセや傾向がわかっている単体露出計で
露出は算出してカメラ側にはいらないってことになります
私も昔の一時期この考えでした
ネガでしか撮らないのであれば全く問題ないのですが…
後者の言い分もわかるのですよねぇ…実際に露出計関連のトラブルは多いですし
シャッターに問題なくて撮影はできるのに
露出計の故障でいちいち修理に出すのがイヤだ…ってのもわかりますものねぇ
昔のテレビデオと一緒ですね(笑
加えて今となっては何十年前のカメラということになると
どうしても現在の最新の露出計に比べると信頼度はもともと低いですし
それならいっそないほうが…というのもわかります。

…という感じで露出計レスモデルは
ちょっと露出にうるさい上級者向け…という感じでラインナップされていました。
SLも典型的な例ですね。
もともとの基本構造がしっかりしたカメラですし
M42マウントで露出計内蔵のSPだとしても
少々使いこなしの難しい「絞込測光」なので
露出計ナシのシンプルなSLの選択は非常に良いかとも思います。

お預かりしているSLは
まずSPも含めて定番のプリズム腐食です。
SP系ではお馴染みの視野中央より少し下の横方向に
黒い帯が出現してしまっています。
これはプリズム交換で対処します。
もうひとつの定番であるミラーアップは今のところないのですが
シャッター幕軸はやはり動作的にかなり怪しい状態です。
やはり高速シャッターの精度は全く出ておらず
このまま放置しておくと近い将来に
1/1000や1/500で開かなくなるか
低速時にミラーアップしたままになる症状が出てきそうです。

露出計回路や電池室がないと
やはり構造的にはかなりシンプルになります。
整備性は文句ナシに良いカメラです。
プリズム交換はもちろんですが
ファインダースクリーン周りに多用されているモルトの交換や
巻上、シャッター幕軸、スローガバナー等の
比較的動作不良を起こしやすい箇所を中心に
動作部分は徹底的に洗浄、清掃、注油を行います。
こうして再組立てしたSLは
ファインダーが見違えるほどクリアなのは当然ですが
巻上やシャッターの動きもお預かり時とは
比べ物にならないほどスムーズに動作するようになりました。
これで当分、安心して使っていただけると思います・

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オリンパスペンFTのカメラ修理

少々ひさしぶりになってしまいました。
皆さまはステキなGWを楽しんでいますでしょうか?
今日は5月7日ということで
「コナモンの日」だそうです。
「コナモン」→「粉もの」ですね。
たこ焼き・お好み焼き・うどん・そば・パンなど
「粉」を使った食品の日だそうです。
ん?この中でとりあえず「お好み焼き」は
個人的に粉もんではないなぁ。。。(笑
ここでいう粉もんのお好み焼きは「関西」のアレですね。
そういえば昨日までの連休は
彼岸に行けなかった墓参りも兼ねて呉に行ってきました。
もちろん「お好み焼き」も食べました!
具だくさんな「スペシャル」をそばダブルで!!!
私、近年、随分食が細くなったのですが
お好み焼きだけはまだ「そばダブル」がぺろりと食べられるようです。
で、さらに別の日には「呉の細うどん」も食べてきました!
これが私にとっての一番の故郷の味ですねぇ…
「お好み焼き」は都内にいても食べられるけど
「細うどん」はこちらでは難しいですものねぇ…
透き通る汁に細い麺…どこまでも優しい味です。
とろろ昆布を入れるのが定番ですが
子供の頃は少し苦手でした。でも今やそれさえも懐かしくて美味い…
また近いうちに食べに行きます!

さてさて

本日は「オリンパスペンFT」のカメラ修理を行っています。
ペンF系の修理もコンスタントに多いですね
最初に出たのが「ペンF」で抱き上げはダブルストローク
途中で追加されたのが「ペンFT」で
巻上はシングルストロークとなり
露出計とセルフタイマーが装備されました。
いずれにしても通常の一眼レフが単純にハーフになったカメラではなく
ハーフ判のコンパクトさを際立たせるために
通常の一眼レフとは全く異なる構造を持ったカメラです。
この構造や造りに感動して入手した方も多いと思います。

お預かりしている「FT」は巻上のスプロケットに問題があるようで
実際に撮影するとコマ重なりを乱発してしまいます。
拝見してみるとスプロケットにロックがかからず
逆転してしまうような状態で
この状態でフィルムをセットして巻き上げても
まともにフィルムは巻きあげられないと思われます。
どのカメラでもそうですがフィルムを巻きあげているのは
フィルムを差し込むスプール側ではなく
パーフォレーション(フィルムの穴)を噛みこんで回る
スプロケット側が主となります。
巻き戻すときだけロックが解けて逆転できるようになるわけですね。
巻き戻し状態から復帰できないのかもと予想もしましたが
スプロケットのロックが嚙む部分がわずかながら摩耗して
滑って空回りしてしまうようです。
部品単体で見ると滑るほど削れているようには見えないのですが
まともに動作するスプロケットと比べてみると
やはりわずかに削れてしまっているようです。

画像は整備後のものです。
スプロケット交換と一言で言うと簡単そうですが
どのカメラでもそうですが
スプロケットや巻上スプールの交換は
巻上部の全分解と全ての調整を伴うので
一言で片づけられない程のなかなかの重作業です。
ただその甲斐もあって
現在は非常にスムーズ且つ確実に巻上が行われています。
加えて「FT」では定番ともなるハーフミラーの交換も行いました。
ミラー単体で見るとそれほど剥離しているようにも
見えなかったのですが
やはりファインダーで見るとかなり剥離が気になる状況だったので
今回も交換で対処いたしました。
これで当分の間、安心してお使いいただけると思います。

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ペンタックスMEスーパーのカメラ修理

HPトップページやSNS等で既にお知らせしていますが
明日5/1~5/6はGW休業といたします。
ご迷惑をおかけいたしますがご容赦くださいませ。

4月もあっという間に終わりましたね
月末の本日30日は「図書館記念日」なのだそうですよ。
1950(昭和25)年のこの日に
「図書館法」が公布されたことが由来となっています。
比較的近年まで図書館にもよく通っていて
本も良く借りていたのですが最近はご無沙汰ですねぇ
私は本は資料としていろいろ調べ物をするために借りることが多く
小説とかは読まないので
そういう目的だと最近はネットでことが足りてしまうのですよねぇ
でもネットだとある程度目的を決めてから調べることになるのですが
図書館だと漠然と「何か面白そうなものないかなぁ…」と
いろいろな分野の本棚を見て回り
それまで自分が知らなかったような分野の本を
手に取ることができるのがいいのですよねぇ
たまにはふらっと図書館には立ち寄ってみたいですね!

さてさて

本日は「ペンタックスMEスーパー」のカメラ修理を行っています。
「Mシリーズ」の基本形となる「ME」が発売されてから
3年後の1979年に発売されたカメラで
絞り優先オート専用機のエントリーモデルだった「ME」に
マニュアル露出モードと1/2000シャッターを追加し
さらに非常に明るくピントの山が掴みやすい
「クリアーブライトマットスクリーン」を搭載し
機能的にも使い心地的にも中級機以上のポジションとなったカメラです。
もともと「ME」の上品なシャッター音や
感触の良い巻上はクラスを超えたものでしたが
「MEスーパー」になったことで機能的にも
より使い勝手の良いカメラになったと思います。
元々のモードダイヤルは「ME」と同様の形状を保持し
そこに「マニュアルモード」が追加され
マニュアル時のSS設定は「UP」「DOWN」の2ボタン式になっています。
ダイヤル式に慣れた身からすると
少々最初は違和感を感じるかもしれません。
しかしながらこのボタン式のSS設定は
この後の「Aシリーズ」や中判の「645シリーズ」にも受け継がれます。

基本的な機械部分のベースは「ME」なので
「ME」同様の機械的トラブルが起こりがちです。
今回お預かりの「MEスーパー」も
MXを除くMシリーズ共通の持病ともいえる
ミラー駆動部のゴムブッシュ劣化によるミラーアップが発生しており
巻上はできずどうにも動けない状態です。
正確にいうと溶解したブッシュが抵抗になり
ミラーダウンができない状態です。
気を付けなければいけないのは
この状態ではなんの動作チェックもできない上に
この状態をとりあえず脱するためには
ミラーボックスを降ろしてミラー駆動部の整備を行うしかなく
もし電子基板関連のトラブルがあったとしても
一通り整備してみないと発見できないことです。
明かな基板腐食とかがない限り
ME系の基板は比較的丈夫なので可能性としては低いのですが…

整備性は非常に良いカメラですが
何度も無駄にミラーボックスの脱着は行いたくはないので
(余計なトラブルを呼び込むリスクにもなります)
当たり前のことですが
症状が出ていようがいまいがシャッターユニットの整備
マグネットの清掃、各ハンダ部の点検や再ハンダ付け
摺動抵抗の清掃等々、トラブルの原因になりそうなところは
一通りしっかり整備を行います。
先述したように全く動作チェックができず分解に至っているので
できることは全て行っておきます。
再組立て後に行うのは電気的な調整のみです。
これで何か組立て後に大きな問題があるとすれば
基板交換しかない…という状態で再組立てを行います。
それから過去にも書きましたが
この時代のペンタックス機は内部モルトがふんだんに使われています。
外からは見えないところですが
劣化させているとこれも余計なトラブルの元になるので
全て交換していきます。
整備性は良いとはいえチェック必須な部分はやはりそれなりに多いですね。

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ミノルタニューSR-7のカメラ修理

今日は「昭和の日」で祝日ですね。
元々は昭和天皇の「天皇誕生日」の日で
昭和天皇崩御の後は昭和天皇が生物学者であり
自然を愛したことから
「自然にしたしむとともにその恩恵に感謝し
豊かな心をはぐくむ」日として「みどりの日」となりました。
さらにその後、多くの国民の要望を受けて
「昭和の日」に改称することとなり
2007(平成19)年の「国民の祝日に関する法律」(祝日法)の
一部改正により4月29日は「昭和の日」に改称され
「みどりの日」は5月4日となりました。
このあたりはもう「GW」でひとくくりにされてしまいがちですが
それぞれの祝日の成り立ちは理解しておきたいですね。
ところでもともと「みどりの日」ということもあり
い草の緑色から、今日は「畳の日」でもあるそうです。
実家がなくなってから本当に畳の部屋に縁遠くなってしまいました。
最近はフローリングに敷ける畳があるらしいから
自宅に敷いてみようかな…
この季節の天気の良い日に窓を開けて畳にごろんと転がるのは
本当に気持ちいいですよねぇ…
昔は当たり前の日常だったのですが…(苦笑)

さてさて

本日は「ミノルタニューSR-7」のカメラ修理を行っています。
1965年発売のカメラです。
前身となる「SR-7」の登場から3年後に発売されたカメラですが
機能的にはSR-7そのままで感度2段階切替の外光式のCdS露出計を装備し
布幕横走り機械制御シャッターで1/1000~1S・Bのシャッターを搭載します。
ただし中身的にはもはやフルモデルチェンジで
骨格ともいえるダイキャストから変更され
縦横幅数mmずつですが小型化が図られています。
このダイキャストは次のモデルでもあるSR-T101でも使われることになり
その後の機械制御シャッター機SRシリーズのダイキャストとして
非常に長く使われることになります。
シャッタ音や巻上フィーリングも明らかに向上しており
使い心地に重きを置くよりミノルタらしいカメラになりました。
細かいことを言えば露出計の感度切替ボタンは背面から
マウント脇に移動され、バッテリーチェックも追加されました
そのため底カバー部の形状やSWもSR-T101とほぼ同様になっています。

お預かりしている「ニューSR-7」は
巻上はロックされておりレリーズも押すことができず
うんともすんとも動かない状態です。
シャッター幕の位置から判断してシャッターチャージはされているようです。
この状態でよくあるのは何らかの原因で
ミラーチャージが完了しておらず
レリーズボタンを押しても何も動けないというパターンが多いのですが
今回はレリーズ自体もロックされて押し込めないので
それとも異なるような感じです。
露出計も不動ですがこれは電池室にかなり緑青が吹きだしているので
接触不良及び配線断線かと思われます。
で、電池室からの配線を見るためにまずは底カバーを外したのですが…
予想以上に電池室からの腐食が広がっていて
巻上部からレリーズ機構の下部も緑青がびっしり付いています。
レリーズロックの原因もこれですね…
応急処置的にレリーズ下部の緑青を落としてみたところ
レリーズは押せるようになったのですが
それでもシャッターは作動しません。
巻上部やシャッターロック機構、ミラー駆動部にも
緑青が広がっておりどこもかしこも動けない状態のようです。
これはもう徹底的に分解して洗浄して磨いていくしかなさそうです。
なかなか手のかかる作業になりそうです。


ここまでは底カバー部分から一部を覗いてみていただけなので
これからまずは全貌が確認できるところまで
本格的に分解を進めていきます。
基本的には機械制御のシャッターで
露出計もシンプルな外光式なので
SSダイヤル連動部にだけ気を付けながら分解を進めていきます。
上の画像でも少し確認できますが
プリズム抑えに挟まれているのはモルトではなくコルクです。
同様にプリズム前部にもコルクが挟まれていますが
モルトとは異なり加水分解を起こしません。
すなわちプリズム腐食が起こりにくいわけですね。
Xシリーズも同じように処置していてくれれば…(苦笑)

まずは駆動部分はスムーズに動けるように
整備を行っていきます。その上で各部の調整を行います。

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キヤノンAE-1のカメラ修理

今日は「缶ジュース発売記念日」なのだそうですよ
1954(昭和29)年のこの日に
明治製菓株式会社が日本初の缶ジュース
「明治天然オレンジジュース」を発売したことに由来しています。
当時の主流は瓶詰のジュースですね。
発売当初の缶ジュースはプルトップも何もついておらず
缶切りで開けるものだったそうです。
その後、1957(昭和32)年に明治製菓から缶の上部に
小さな缶切り(オープナー)が付いた
「缶切り付缶ジュース」が発売されました。
缶切りで飲み口と空気穴の2ヵ所を開けて飲むスタイルであり
缶切りを持っていなくても、
いつでもどこでも手軽にジュースが飲めるということで
評判になったのだそうです。
さすがに私が記憶のある頃には今のものとあまり変わらない
プルトップのついた缶ジュースが普通に売ってましたねぇ
でも神殿頃にはまだ瓶ジュースの自動販売機も多くて
自販機の栓抜きで蓋を開けて
飲み終わったら自販機の横にある瓶ジュース用の木箱に
空瓶を立てておいた記憶があるなぁ…
そういえばこの頃、コカコーラ系の瓶ジュースで
「スーパーカー王冠」ってのがあって
めちゃくちゃ集めてました。
じいさんが協力してくれて自販機の栓抜きの穴(その下に王冠が落ちる)に
紐で磁石をそーっと降ろして王冠をたくさん取ってくれたなぁ(笑)
スーパーカー王冠…ヤフオクとかにも出てますね。
いやさすがに買いはしませんが…懐かしいですねぇ…

さてさて

本日は「キヤノンAE-1」のカメラ修理を行っています。
1976年に発売されたカメラで「Aシリーズ」最初のモデルかつ
全ての「Aシリーズ」の基本となるカメラです。
世界初のマイクロコンピュータ搭載カメラで
そのマイコン(死語?)が中央集中制御する方式を採用し
電子化により部品点数を従来機種より300点も減らしたそうです。
また、生産にも自動化を大幅に取り入れ、高機能、低価格を実現しました。
他社の同クラスのカメラより2万円近く安い価格設定が実現できたのだそうです。
キヤノンがこういう時代の節目節目で
一気に高機能低価格を進めるモデルを出すことが多いですね。
過去の「キヤノンP」や「初代キヤノネット」もそうですね。
それらのカメラが出てきたときと同じく
このAE-1の出現により直接的にはないにしろ
また高機能低価格についてこれなくなったメーカーが
何社か一眼レフ市場から撤退することになったとも思います。
「連射一眼」のキャッチフレーズで一世を風靡したカメラでもあり
現存台数は非常に多いと思われます。
大量に売れたカメラの宿命で手荒く扱われていたり
ジャンク箱に酷い状態で転がっているものも多く
そういうものを見るとちょっと切なくなってしまいますね。
キヤノンが社運を賭けて開発した渾身の一作であり
非常に良くできた使いやすいカメラです。

お預かりしている「AE-1」は
頻繁にミラーアップしたままになってしまいます。
「Aシリーズ」特有のシャッター鳴きの原因ともなる
ミラー駆動部のトラブルかとも思いましたが
今回はシャッター後幕の動きが悪く
シャッター走行後にうまくミラーダウンレバーを蹴れないようです。
横走りシャッター機ではよくあるパターンのトラブルですが
AE-1では少々めずらしいですね。
後幕走行不良ということは当然ながら
高速シャッターの精度も全く出ていません。
シャッター幕軸の清掃整備を行い動きを良くしてから
微調整を行う必要があります。
加えてこれも「Aシリーズ」では定番ですが
露出計が随分オーバー側にズレており
内蔵露出計の言う通りに露出設定を行うと
2段以上オーバーになってしまいます。
当然ながらオート露出も2段近くオーバーに制御されています。
抵抗や接点の汚れが原因かと思われます。

現在抱えているトラブルはもちろんですが
定番のシャッター鳴きやオート時の絞り制御レバー等の
整備も同時に行います。
今回はシャッター鳴きは出ていませんが
絞り制御レバーの方は動くたびに油切れ特有の
「ギャン」といった異音が小さくですが出ていて動きも重いの状態でした
このあたりはいずれにしても定期的に整備を行う必要があります。
電子制御機ということでメンテナンス性に不安があると
思われることもあるでしょうが
AE-1は妙な素人分解をされていない限り
致命的な電気トラブルの少ないカメラです。
整備性もそれほどは悪くありません。
SSダイヤル連動は糸連動だったりで
まだ電子制御機としては過渡期にあるモデルですが
機械制御と電子制御が上手くバランスされたカメラだと思います。

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キヤノンF-1のカメラ修理

今日は「哲学の日」だそうですよ。
紀元前399年のこの日に
古代ギリシアの哲学者ソクラテスが
死刑宣告を受けて刑の執行として
獄中で毒を飲んで亡くなったことが由来になっています。
哲学はよくわかりませんが
あまり難しく考えすぎないで
今日をしっかり生きるとシンプルで良いかとも思います…
ちなみに今日はこのソクラテスにちなんで
「悪妻の日」という日も制定されています。
ソクラテスの妻・クサンティッペが
悪妻として有名であったことに由来した日なのだそうです。
西洋では悪妻の代名詞ともなっているが
後世の作り話である部分も多く
彼女の本当の姿については殆ど分かっていないのだそうです。
悪妻にしろ悪夫にしろ
生活を共にする家族との関係が悪いとそりゃしんどいですよねぇ
で、ソクラテスが言うには
「ぜひ結婚しなさい。よい妻を持てば幸せになれる。
悪い妻を持てば私のように哲学者になれる」なのだそうです。
うーん…何といってよいのやら…(苦笑)

さてさて

今日は「キヤノンF-1」のカメラ修理を行っています。
つい数日前にも「F-1 OD」の修理を行いましたが
今回は普通のブラックです。
ただ、ODと同様に今回もいわゆる後期のF-1Nです。
オリーブはちょっと変わり種として
F-1は基本的にブラック塗装で
この時代、他のカメラでは主流だったシルバーがありません。
この後の時代のブラック塗装のケマラの人気ぶりを見ると
さすがキヤノンは時代を先取りしたのだな…とも思えますが
シルバーのF-1も見てみたかったような気がします。
ちょっと想像もつかないのですが…(笑)
このF-1がブラック一色だったことや
後のAシリーズでもブラックのみのモデルがあったり
シルバーの設定があってもブラックが多く売れていたりということで
他のメーカーに比べてもキヤノンの一眼レフは
ブラックのイメージが強いですね。

お預かりしている「F-1」は
動きの悪いところもいろいろあるのですが
一番の問題はファインダー内露出計指針の
絞り連動「〇指針」の動作不良です。
レンズを装着して絞りを動作しても
上手く連動できないようです。
実はこの「〇指針」関連のトラブル
F-1では結構よくあるトラブルです。
〇指針自体が非常に小さなバネ力で戻るような
構造になっていることと
ミラーボックス側面に支点があるのですが
ここが粘ったり固着することが非常に多いのです。
おまけにその視点から伸びている先端に〇指針がついた
腕部分がわずかな歪みや変形で周辺の部品に
干渉し動けなくなっている場合も多くあります。
今回も支点自体の粘りと腕部分のわずかな歪みによる干渉
両方の原因で動作不良を起こしている様です。
F-1は部品一つ一つの剛性や強度は申し分ないのですが
意外と繊細な調整や構造で動作している部分もあるので
定期的な整備が不可欠なカメラだと思います。
今回は問題ございませんでしたが
幕ブレーキ周りのデリケートさも見逃せません。

シャッターや巻上、ミラー駆動部等々
各部の整備を一通り行って少し油が馴染むまで様子見している状態です。
全体的に非常にスムーズに動作する状態になっています。
やはり旧F-1には旧FDレンズが似合いますね。
装着されているのは50mmF1.4s.s.cです。
いつ見ても思いますがこの時代のTTL露出計内蔵カメラで
ペンタプリズム部がこんなに低く精悍に構えているカメラは
F-1だけですね。
やはりFTの頃に開発したCdSをコンデンサレンズの後ろに置く構造なのが
効いているのではないかと思います。
ニコンF2と並んで間違いなく70年代の高級一眼レフを
代表するカメラだと思います。

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ペンタックスMXのカメラ修理

今日は「歩道橋の日」だそうですよ。
1963(昭和38)年のこの日に
大阪駅前に日本初の横断歩道橋が完成したことに由来しています。
東京で初めての横断歩道は
同じ1963年の9月10日に五反田駅前に完成したのだそうです。
意外と近年ですよね…私が記憶がある頃には
もう近所に歩道橋が何か所もありました
急激に全国に普及したのですね…
家から一番近い歩道橋は歩いて1分もかからないところにあり
小学校の通学で毎日通り
夕焼けのキレイな日には歩道橋の上から呉港方面を眺め
夏の呉海上花火大会の日もこの歩道橋の上から
何度も眺めました。
今でもちゃんと健在です。長らく渡っていませんが…
歩道橋は交通事故を大きく減らすことに貢献したそうです。
しかし、その一方で自動車を優先し
高齢者や障害者などの歩行に
大きな負担を強いるものだという批判もあったのだそうです。
そうそう、子供の頃は歩道橋渡ることなんて
何とも思っていなかったけど
今、実際に歩みが少し不自由になってみると
歩道橋ってしんどいのですよねぇ…渡れなくはないのですが…

さてさて

本日は「ペンタックスMX」のカメラ修理を行っています。
1976年11月発売のカメラです。
小型化を大きく進めた「ペンタックスMシリーズ」の
最初のモデルとなったカメラですが
最初に出た割にはシリーズ内では実は異端児的なモデルで
その1ヶ月後に発売された電子制御機「ME」のほうが
「Mシリーズ」の中核を担うモデルでした。
「Mシリーズ」の大きな目標は「小型化」と同時に
「電子化」でもあり
従来の機械制御式横走りシャッター機は
既に貴重な存在になりつつありました。
実際に「MX」以外の「Mシリーズ」のモデルは
「ME」がベースとなり
その後の「Aシリーズ」のベースともなっていくのですが
「MX」だけは取り残された形になり
後継機も開発されないまま純然たる機械制御シャッター機としては
ペンタックス最後のモデルとなってしまいました。
コンパクトな機械制御シャッター機というジャンルでは
実質このMXとOM-1の2機種の独壇場で
後発のMXはこのジャンルで既に大きな成功を収めていた
OM-1を相当に意識して開発されたカメラだと思われます。
OM-1同様に小型化するためにあらゆる部分に工夫や
独特の構造がみられその上露出計は整備するには厄介な
LED式ということもあり
修理整備の難易度としては高いカメラかと思います。

お預かりしている「MX」はもともとご依頼者様のお父様が
購入したカメラでご依頼者様がお生まれになった記念に
買われたものだそうです。
ということはご依頼者様の写真をこのMXで相当たくさん
撮られているはずですね。
そんな思いでの詰まったMXですが
さすがに近年は使われずに仕舞い込まれたままになっていたらしく
その間にいろいろなトラブルを抱え込んでいるようです。
まず保管時に電池が入れたままになっていたと思われるのですが
電池室裏の端子、そこから伸びる配線、繋がる電子基板に至るまで
盛大に緑青が発生しておりもちろん通電できない状態になっています。
露出計はもちろん動きません。
シャッターもスローガバナは固着しており
高速シャッターのバランスも全く話にならない状態で
とてもとてもこのままではまともな写真が撮れない状態です。
シャッターだけではなく巻上から裏蓋の開閉まで
いろいろな部分で動作不良が起きてしまっています。

電池室・露出計周りの緑青や腐食には少々苦労しましたが
シャッターや巻上・ミラー駆動は
致命的な破損があるわけではなく
とにかくスムーズに動けるように
抵抗になる古い油や汚れを取り除きひたすら清掃を行います。
その上で最小限の注油を行い
あとは微調整を繰り返すことで本来の動きを取り戻します。
画像は一通りの整備が終わって少し様子見の状態ですが
見違えるほど動きはよくなりました。
MXのシャッターは少々厄介な傾向が合って
先幕と後幕の幕速バランスがやたらと崩れやすい傾向があります。
そのため1/1000が開かない、高速シャッターで写真の片方が黒くなる…
というトラブルがかなりの頻度で発生します。
同じような構造のシャッターを持つOM-1でも同じようなトラブルはありますが
MXのほうが圧倒的にその頻度が高いような気がします。
OM-1以上に定期的な整備が必要なカメラだとは思います。
それでも一度、きちんとしっかり手を入れてやれば
また当分の間は安定して動作できると思います。
今回のMXも当分安心して使える状態になったと思いますし
今度はご依頼者様の手で
いろいろな思い出を切り取っていただければと思います。

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