キヤノネットのカメラ修理

今日は「青函トンネル開業記念日」なのだそうですよ
1988(昭和63)年のこの日に
本州・青森と北海道・函館を結ぶ北海道旅客鉄道(JR北海道)の
海底トンネル「青函トンネル」が開通しました。
それに伴い、青森県の中小国駅と北海道の木古内駅を結ぶ
JR海峡線(当時の愛称:津軽海峡線)が同日に開業し
それまで、青森駅と函館駅を結ぶ鉄道連絡船として
日本国有鉄道(国鉄)により
青函航路(青函連絡船)が運航されていましたが
青函トンネルの開通により同日に廃止され、80年の歴史の幕を閉じました。
1946(昭和21)年の地質調査開始から42年の歳月がかかり
トンネル本体の建設費は計画段階で5384億円でしたが
実際には7455億円という巨費が投じられました。
また、取り付け線を含めた海峡線としての建設費は
計画段階で6890億円、実際には9000億円に上ったのだそうです。
気の遠くなるような数字が並びますが
それもそのはずで全長53.85km、海底部23.30km、
全長の43%が海底というトンネルです。
長らく世界最長の鉄道トンネルでしたが
2016年6月1日にスイスのアルプス山脈を通る
57.09kmのゴッタルドベーストンネルが開通し
現在は世界2位の長さとなっています。
それでも想像もつかないような長さと大きさですねぇ
2016(平成28)年3月26日には
新青森駅と新函館北斗駅を結ぶ北海道新幹線が開業し
これに伴い、青函トンネルは在来線の海峡線と
北海道新幹線の共用走行を行っています。
まぁ、私は北海道・東北どころか
北関東ですら未踏の地なのですが…(苦笑)
日本は意外と広くて大きいですよねぇ…

さてさて

本日は「キヤノネット」のカメラ修理を行っています。
今回は初代のキヤノネットです。
1961年に発売されたキヤノン初のコンパクトカメラですね。
(この時代ですから大きさ的にはコンパクトではないですが…)
当時の一般向けカメラとして
ほぼ最高の性能を持っていましたが
キヤノンの社員たちが自分たちの月給で買えるカメラを望み開発し
18,800円という性能に比して非常に安価なカメラとなりました。
発売直後は2週間分と見積もっていた在庫が
数時間で売り切れ社会現象にまでなり
カメラ業界からはダンピングであるという批判の声も上がりました。
キヤノネットの登場はまさに価格破壊とも言え
カメラの低額化・高機能化に付いていけなくなった
多くのカメラメーカーが倒産・撤退するきっかけともなったそうです。
搭載されるレンズは45mmF1.9の大口径
シャッターユニットはコパルSVでSSはB・1s~1/500です。
セレン光電池を使用する露出計を搭載し
連動して指針挟み込み方式のSS優先AEを搭載します。
露出計はオフとなりますがマニュアル露出も可能で
まさに一通り何でもできるカメラです。
当時としては非常にお求めやすい価格帯のカメラですが
それは主に部品のユニット化や生産ラインの効率化を
推し進めた結果で構造・素材的には全く安っぽい部分はありません。
当時はまだ少なかった指針挟み込み式のAE制御は
今見ても非常に上手く造られており
シャッターユニット側や絞りとの連動部も
非常に考えられて造られています。
整備性もきちんと考えられており
各部の調整も非常に行いやすくできています。

ただ、さすがに発売されてから60年経過するカメラです。
経年劣化は出てきていて当たり前ですね。
お預かりしているキヤノネットはまずシャッターが全く開きません。
巻き上げできてレリーズボタンも押せて
シャッターが駆動しようとするかすかな作動音も聞こえるのですが
肝心のシャッター羽根はピクリとも動きません。
かんぜんい貼りついてしまっているようです。
マニュアル時には絞り羽根は上手く動作しますが
さらに小さな力で絞り羽根を駆動するオート時には
絞り羽根も上手く駆動できないようです。
こちらも貼り付きまではいかなくても
羽根の動作の粘りは出ているようです。
レンズにはそれなりにはカビがあり
ファインダーはかなり曇っています。
クモリは汚れではなくレンズ・ガラスの劣化もありますので
完全に除去はできませんが
できる限りの清掃を行っていきます。
シャッター・絞り・巻上等の駆動部分は
入念に清掃を行った上で必要に応じて最小限の注油を行い
セレンの劣化もあるものの露出計・オートも
できる限り調整します。
こちらも実用上には問題のないレベルに精度は確保できそうです。

ここ数日、作業に入るといい具合に集中するせいか
分解時の画像を撮るのを忘れがちです(苦笑)
…というわけで今回も一通り整備の終わった段階での画像です。
レンズは全く問題ないほどにクリアになり
ファインダーは多種のカビ跡とクモリは残りましたが
お預かり時よりは格段にクリアになっています。
シャッター及び絞り制御は非常にスムーズに動作すようになり
露出計もまずまずの精度が出ています。
画像には写っていませんが巻上レバー、巻き戻しクランクは
底部に配置されており
上カバー部にはレリーズボタンとそれを囲む「T」切替リング
フィルムカウンター窓しかありません。
そのすっきりした上カバー部に
筆記体で「Canonet」のモデル名が刻印されていて
何ともオシャレなデザインです。
次モデルでは巻上レバーも巻き戻しクランクも
一般的な上カバー部に配置されるので
この独特の佇まいは初代ならではのものですね
もう少し様子見して動作が落ち着いた頃に
最終テストを行い、問題なければ完成となります。

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