キヤノネットQL17のカメラ修理

今日は「アパート記念日」だそうですよ。
1910(明治43)年のこの日に
東京・上野に日本初の木造アパートが完成したことが由来だそうです。
そのアパートは「上野倶楽部」という名前で
洋風の外観を持つ5階建て70室の賃貸アパートだったそうです。
上野公園に隣接しており、洗面所・浴槽・電話は共同でした。
実際に住んでいた人たちの職業は
公務員や会社員、教師が主で、独身者はおらず
日本人だけでなくロシア人やフランス人の外国人も住んでいたのだそうです。
結構な高級アパートだったのでしょうねぇ
それまではいわゆる「長屋」ですよねぇ
私も生まれ育った実家が昔ながらの賃貸の長屋でした…
今考えるとあれはあれでいろんなところに古き良き趣が…(笑
私は独り者ですし、この先もずっと
気軽に住み続けられる賃貸アパート在住だと思いますが
気軽さ故に数年に1回、無性に意味もなく引っ越したくなるのですよねぇ
きっと何かをリセットしたいのだと思いますが…(苦笑)
思い立つたびに本当に引っ越していては
明らかに「引っ越し貧乏」への道へ一直線ですし
今の仕事や環境を考えるとそう簡単に引っ越せるわけがないと
冷静になると落ち着くのですが
たまにやたらとネットで不動産情報見てしまいます。
それも近所じゃなくて縁もゆかりもない地方のモノを…(笑
まぁもちろん現実的ではないのですが
地図と併せて見ているだけでちょっとした気分転換にはなるかな

さてさて

本日は「キヤノネットQL17」のカメラ修理を行っています。
キヤノネットQLと聞けば小型化された「ニューキヤノネット」や
「G-Ⅲ」を思い浮かべる方も多いと思いますが
今回は「ニュー」より前のタイプで
初代キャネットから流れをくむちょっと大柄な
「キヤノネットQL17」です

社会現象になるほどの大ヒットを記録し
コンパクトカメラの歴史を大きく変えたと言って良い
「初代キヤノネット」のデビューが1961年
その後、少し風変わりな廉価版「キヤノネットジュニア」が追加され
1964年には実質的な後継機の「キヤノネットS」が発売されます。
さらにその翌年の1965年に
「キヤノネットS」をベースに当時のキヤノンカメラの
お家芸ともいえる「QL(クイックローディング)」を搭載し
登場したのが今回の「キヤノネットQL17」です。
初代と比べて大きな変更点をあげると
まず巻上は底部トリガー式から一般的な上カバー部巻上レバーになりました。
そして露出計はセレン光電池を使用するものから
CdS使用のモノへと変更され、それに伴って電池が必要になっています。
レンズもキヤノンレンズSE45mmF1.7になっています。
シャッタユニットは変わらずコパル製を搭載します。
初代と同じく基本的には露出計連動の
シャッタースピード優先オートで撮影するカメラですが
マニュアル露出も露出計はオフとなりますがしっかり使えます。
この時代のコンパクト機なので現在の感覚で
コンパクトと言うにはかなり大柄ですが
その分しっかり造られていて信頼性も高いのです。
当然、修理する立場からすると内部スペースに余裕もあるので
整備性も高く調整も行いやすいカメラです。
CdS使用になったことで露出計・オートの調整も行いやすくなっています。

お預かりしている「キヤノネットQL17」は
ご依頼者様のご実家でかなり長い間仕舞い込まれていたようです。
使っていた頃はかなり丁寧に扱われていたと思われますが
いかんせん仕舞い込まれてからは誰にも触られることもなく
長い時間を経過してしまったようです。
シャッターを始めとしてあちこちで固着が起こっていて
まずはスムーズに動けるように整備を行わなくていけませんが
それに加えてちょっとマズかったのが
当時の水銀電池をそのまま入れたままで仕舞ってしまったことです。
水銀電池はガスを発生し液漏れが起きなかったとしても
周りの金属部品を腐食させます。
今回も電池自体も真っ黒に腐食してしまっており
電池蓋の一部は腐食により破損、
電池室周りの端子・接点・配線は全て全滅です。
この辺りは一部は代用品で交換、配線は全て交換
使えそうな部品も徹底的に磨きこんで腐食部分や緑青を落とします。
行うことはシンプルですがなかなか手のかかる作業です。


初代ではシャッターユニット部のASA設定やSS情報を
露出計側に伝える機構が
少々調整の厄介なデリケートな造りだったのですが
QL17になってそのあたりも改善されています。
初代もそうですが指針抑え式SS優先オートの
お手本のような造りをしています。
見た目にも制御はわかりやすく調整機構や
露出範囲外の場合のシャッターロックも非常によくできています。
さすがはキヤノンですねぇ

電池室まわりの処置がひと段落したら
シャッターや巻上、オート制御機構の整備を行っていきます。
普通に撮影に使えるのはもちろんですが
なるべく違和感なくスムーズに取り扱えるように
しっかり仕上げていきます。
ご依頼者様はこのカメラを使うのは
きっと初めてなのだと思いますが
気持ちよく使っていただければと思います。

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