ペンタックスS3のカメラ修理

今夜はいわゆる「中秋の名月(十五夜)」ですね。
都内の今夜の天気は雨が降ることはなさそうですが
曇りがちかもしれません…少しでも月が見えればいいですね。
たとえ月が見えなくても
中秋の夜に雲などで月が隠れて見えないことを「無月(むげつ)」
中秋の晩に雨が降ることを「雨月(うげつ)」と呼び
月が見えないながらも
なんとなくほの明るい風情を賞するものとされているそうです。
「中秋の名月(十五夜)」は
旧暦8月15日~16日の夜(八月十五夜)の月をいいますが
個人的にはまだ夏の空気が少し残るこの季節より
少し寒いですがより空気が澄んでくる
旧暦9月13日~14日の夜「十三夜(じゅうさんや)」のほうが
美しい月が見られるような気がします。(今年は10/27)
まぁでもそんなことを言ってないで
今日は「月見酒の日」で「洋菓子の日」でもありますし
月を眺めながら(見えなくても感じながら)
お団子もいいけどケーキでも食べて
甘いものにも合う強めのお酒を味わいたいですねぇ

さてさて

本日は「ペンタックスS3」のカメラ修理を行っています。
1961年発売のカメラです。
Sシリーズは当初は普及機クラスとしての発売でしたが
S2→S3と進化していく中で
機能的にも構造的にも先行発売のトップモデル「K」を上回り
ペンタックスの主力機として定着していきます。
「S3」は発売当初から1/1000を搭載し
(S2では最初は1/500まで最終的には1/1000搭載)
スーパータクマーレンズ群との組み合わせで
完全自動絞り(レリーズに連動して
瞬間的に絞り込みところから開放に戻るまでを自動に行う)を
実現しました。
後の一眼レフでは当たり前の機能なのですが
「S2+オートタクマー」では
レリーズに連動して絞り込みは行うものの
開放はレンズ側で手動で行う形だったのです。
このあたりはこの時代に後の一般的な一眼レフと変わらない機能に
どんどん進化している過渡期にあたります。
少しレトロな外観と露出計こそ内蔵しませんが
マニュアルカメラとしての機能を一通り持つ
シンプルで使いやすいカメラです。

お預かりしている「S3」は
この時代のアサヒペンタックス系ではお馴染みですが
やはりシャッター幕の劣化・硬化が進んでしまっています。
巻上げてレリーズすると先幕は何とかズルズルッと走りますが
後幕はほとんど動くことができません。
先端が少しだけ出てくるのでそっと引っ張って助けてやると
なんとか最後まで走りきるような状態です。
先幕もそうですが後幕が出てきた状態で確認すると
シャッター幕はガチガチに硬くなっていて
波打ってしまっているような状態です。
ゴム引幕のゴムの層が完全に劣化してしまっている状態です。
破れや穴こそありませんが
こうなってしまうとシャッター幕は交換するしかありません。
未整備のAP,K,S2,S3,SVあたりはかなりの高確率で
シャッター幕交換を前提とした整備が必要になります。

まだ分解整備に取り掛かったばかりの状態です。
もちろん画像に見えている幕はまだ交換前です。
幕自体の劣化もそうですが
各部駆動部も積年の汚れや古い油脂のせいで
かなり動きの悪い状態です。
幕交換と並行して幕軸の洗浄整備
巻上部の清掃整備、ミラー駆動部の清掃整備を入念に行います。
その上で最終的に各部微調整を行い
シャッタースピード等の精度を出していきます。

↓ をクリックすると「東京フィルムカメラ修理工房」のホームに戻ります。