キヤノンFPのカメラ修理

今日は「テレビCMの日」だそうですよ。
1953(昭和28)年のこの日に開始された
民放の日本テレビで日本初の
テレビCMが放送されたことの由来して言います。
初のCMは「精工舎の時計が正午をお知らせします」という
服部時計店(現:セイコーホールディングス株式会社)の時報だったそうです。
カメラでもレンズシャッターユニットで
お馴染みの精工舎ですね。
このCMは本来、30秒スポットでしたが
フィルムが裏返しになっている上に音も不明瞭だったそうです。
そのため正午に放送された初CMは
わずか3秒で中止されるというハプニングがあり
同日夜7時に第2号CMとして改めて放送されたそうです。
なんともほのぼのする懐かしい感じのCMです。
私の生まれる16年ほど前なのですよね…
意外と最近だな…と思ってしまいます。

さてさて

本日は「キヤノンFP」のカメラ修理を行っています。
1964年発売のカメラです。
「キヤノンFシリーズ」の一号機は外光式露出計を搭載する
「FX」ですが「FX」から露出計を省略したモデルが
「FP」となります。
本来装備される内蔵露出計を省略したものだから
単なる下位モデルかというとそうではなくて
この時代にはまだ露出計は単体露出計が主流で
露出計内臓カメラはまだ出始めの頃です。
そしてはハイアマチュアやプロの間では
「カメラ内蔵の露出計はまだ信用できない」とか
「余計なものが入っているとトラブルの元となる」という意見も根強く
あえて露出計が内蔵していないカメラが好まれる傾向もあったそうです。
確かに「FX」だとTTLではなく外光式だし
当然ながらマニュアル露出機ということもあり
単体露出計を使っても操作性や便利さにさほど差はないのですよね。
そういう背景もあって「FX」に追加された
「露出計非搭載モデル」が「FP」です。
他メーカーにも似たような立ち位置の露出計レスモデルは存在し
露出計搭載が当然の装備と思われるまではまだ少し時間がかかりました。

お預かりしている「FP」はシャッターは一通りは切れているのですが
その動きがかなり不安定です。
最近のブログでキヤノン機のシャッター音やミラー駆動音の話もありましたが
この「FP」もシャッター駆動部からと思われる
「ギャイン」という異音が少々しています。
それもその音がシャッターを切るたびに明らかに異なっています。
そんな感じなので測定機でシャッタスピードを測ってみると
シャッターを切るたびに無視できないレベルで
露出量が大きく変わります。
先幕・後幕の幕速バランスも崩れているので
写真両端に明らかな露光差も出るような状態です。
長い間使われずにしまい込まれていたこともありますが
何十年と未整備の状態なので
機械的駆動部のあちこちに汚れや油切れを原因とする
動作不良が起きていると思われます。
シャッター駆動部はもちろん巻上機構やミラー駆動部も含めて
一通りの整備が必要な状態です。

取り掛かり始めの画像ですが
プリズム抑えにコルクが使われているのが写っています。
後のFTやFTbになるとプリズム抑えにモルトが使われるようになり
それ由来のプリズム腐食が非常に多いのですが
FXやFPではモルト由来のプリズム腐食はありません。
ただし今度はこの頃のプリズム蒸着は
頭頂部の蒸着から経年劣化で剥がれくるものが
非常に多くFXやFPで腐食がないプリズムも非常に少ないです。
今回の「FP」も若干蒸着の劣化が起きていて
ファインダー内をよく見ると中央にうっすら縦線が見えていますが
撮影に影響あるレベルではありません。
これでも状態としてはかなり良い部類だと思います。
プリズムは今回は清掃のみで対処いたします。
加えて装着されていたFL50mmF1.8レンズは
絞り羽根が完全に固着していて絞っても羽根が全く出てきません。
ボディ側の整備を一通り行った後に
こちらも対処していきます。

↓ をクリックすると「東京フィルムカメラ修理工房」のホームに戻ります。