日別アーカイブ: 2020年7月10日

ヤシカエレクトロ35GXのカメラ修理

今日は「潤滑油の日」だそうですよ。
潤滑油の通称名でもある「OIL」(オイル)を
反転させると「710」に見えることが由来になっています。
潤滑油は大事ですね。もちろんカメラ修理にも欠かせません。
古いカメラのトラブルの大半は潤滑油不足や
潤滑油が劣化してしまったことによる動作不良です。
機械ものは全て潤滑油がないと
ほとんどの場合、まともには動作しません。
70年代あたりの国産カメラの精度は非常に優秀で
潤滑油が正常に機能していない場合でも
とりあえず動くものが多いです。
ただし、さすがに精密な精度が必要とされる
シャッタースピード等は正常な値にはなりません。
それでも動作するだけでもすごいことだと思います。
しかしながら、動きにくい身体を無理して動かしているような気して
何だか切なくなってくるので
必要最小限のバネ力でスムーズに動けるように整備しなくては!
と妙な使命感に煽られます(笑)
カメラ以外にも身の回りの機械には潤滑油が必須です。
やはりわかりやすいのはクルマやバイクですかね。
交換時期はいろいろな考え方があって
なかなかどこで判断するのか難しいものがありますが
最低でもメーカーが推奨する範囲内では交換しておきたいものです。

さてさて

本日は「ヤシカエレクトロ35GX」のカメラ修理を行っています。
1966年の初代エレクトロ35から始まったこのカメラも
今回の「GX」が最終モデルとなります。(1975年発売開始)
電子制御シャッター搭載の絞り優先AE機という基本路線に
変更は全くなかったのですが
初代と比べると「GX」は随分スマートな印象になりました。
レンジファインダーを搭載しつつ大きさもかなりコンパクトになっています。
小さなエレクトロというと「MC」が思い浮かびますが
あれば目測機でレンズもF2.8と
コンパクトさを最優先に作られた機種なので
ちょっとエレクトロの本流からは外れますかね。
エレクトロといえば暗所に強くなければいけないため
(「ろうそく1本の光でも写る」を初代から目指して作られている)
レンズは当然40mmF1.7の大口径です。
使用電池はHM-N(NR52)です。
アダプタを使うか、そうでなければひと工夫必要な電池です。

GXの前身モデルはGLがそれに当たります。
GLの時代に受光体はCdSからSPD(シリコンフォトダイオード)に変更され
より少ない光の下での反応が鋭くなっています。
ただお預かりしている「GX」は
その自慢のオート制御がおかしなことになっており
明るいところで絞りを開放にしても
4、5秒ほどのシャッタースピードで動作します。
逆に絞りを絞っても少し薄暗いところに持って行っても
あまり変化がありません。
基盤内の電子部品の問題であれば修理不能の可能性もあるのですが。。。
一番に疑ったのは各部の接点です。
電子制御カメラは電気接点の状態に動きが非常に左右されます。
もちろん新しいうちは全く問題ないのですが
経年劣化で接点不良が起きるのは定番のトラブルです。
これが前期のボディサイズの大きなエレクトロなら
レンズ鏡胴内にずらりと並んだ固定抵抗のハンダ不良を疑うのですが
後期のエレクトロにはそういう部分もありません。
いろいろ調べていくうちに結局最大の原因だったのが
SPDの不良でした。SPDは一般的にはCdSより劣化もしにくいということで
あまり疑っていなかったのですがちょっと予想外でした。
CdSやSPDのような受光体はセレン光電池のように
光によって起電するわけではなく
光の強さによって抵抗値が変化します。
明るいところだと抵抗値が低く電気を多く流し
暗いところだと抵抗値が高く電気があまり流れないわけですね。
で、今回の「GX」のSPDは裸の状態でLVのランプの前に持って行っても
抵抗値が非常に高いままでほとんど電気を流せません。
明るいところでも長時間露光になる原因はこれのようです。
部品取り個体からSPDを移植することにします。

SPDの問題は何とかクリアしましたが
電池室に定番の腐食があり裏側の端子や配線にも
ダメージがあるため交換及び修理を行っていきます。
全体的には非常にキレイな状態で
保管環境もよかったのか
非常に評判の高いカラーヤシノンレンズも
ほとんど汚れやカビのない状態でした。
これほどきちんと保管してあってもやはり経年劣化は起こるもので
いろいろとトラブルは出てきますね。
それも今回の整備で当分、安心して使っていただけると思います。
細かい調整を粉いつつ再組立てして
完成にしたいと思います。

↓ をクリックすると「東京フィルムカメラ修理工房」のホームに戻ります。