キヤノネットのカメラ修理

今日は「井戸の日」だそうですよ。
子供の頃には近所に何箇所か井戸があったのを
普通に見ていたような気がするのですが
今では見かけることがすっかりなくなりましたねぇ。。。
そういえばその近所の井戸の中でも
一箇所だけ昔ながらのつるべで汲み上げる井戸があって
上から見下ろしても真っ暗で何も見えないのですが
何だか妙に怖かったことを思い出します。
井戸水は夏は冷たくて冬でも凍らないし
すっきりと美味しいのですよね。
でも井戸そのものはちょっと怖いところでもありますよね
貞子さんが出てきそうな気もするし。。。(苦笑)

さてさて

本日はキヤノネットのカメラ修理を行っています。
キヤノネットもいくつもの種類があるのですが
今日のキヤノネットは伝説的に売れまくった初代モデルです。
1961年発売でキヤノン初のコンパクトカメラでもあります。
(現代の基準で行くとコンパクトでもないですが。。。)
キヤノンSE45mmF1.9の大口径レンズを搭載し
セレン光電池を利用する露出計を装備し
その指針を挟み込むことにより
シャッタースピード優先オート露出を行うことができます。
シャッターユニットはコパルSVで最高速は1/500です。
マニュアル露出も可能ですがその場合には露出計はオフとなります。
(正確にいうとオフにはならないのですが
ファインダーに連動表示しなくなります。)
大口径レンズにシャッタスピード優先オート
マニュアル露出も可能。。。という要素は
最終のキヤノネットでもあるG-Ⅲまで共通項として受け継がれます。
もちろんレンジファインダーも装備します。
当時の一般家庭用カメラとしては最高の性能と機能を持ちながら
18,800円という衝撃的な価格で発売されました。
キヤノンの社員の皆さんが「自分達の給料でも買えるカメラを。。。」
とういことで開発されたカメラだとも言われています。
当時の18,800円はそれなりに高価ですが
それでもこの性能で2万円を切るカメラは存在せず
発売と同時に爆発的に売れたそうです。
発売当初、2週間分として見積もっていた在庫が
数時間で売り切れてしまったという伝説も残っています。
このカメラの登場とそのヒットの影響で
それ以降の低価格化と高機能化についていけなくなった
メーカーがカメラ製造から撤退せざるをえなくなったとも言われています。

それほど大ヒットしたカメラですので
現存している個体数も非常に多いと思われます。
ただ悲しいかな、現在の中古市場ではそれほど注目されている
カメラとは言えずジャンク扱いとなっているものが多いのも事実です。
当然、全く整備されていないものが多いので
状態の悪いものも多いです。
確かに現在の基準では多少大柄ですが
使いやすく写りもよくレトロなデザインもなかなか良いと思います。
サイズに余裕があるため整備性もよく
一度手を入れればかなり長く使えるカメラだと思います。
価格破壊的な設定のカメラですが
中身に安っぽいところは全くなく非常にしっかり造られたカメラです。

お預かりしているキヤノネットは
まずシャッターを押してもうんともすんともいいません。。。
シャッターの羽根ががっちり固着してしまっているようです。
最も心配されるのはセレン光電池の劣化ですが
今回の個体はそこは全く問題なくわずかな調整で
正しい値を示してくれるようになりそうです。
オート時には設定したシャッタースピードと露出計の指針位置によって
シャッターレリーズしたときに絞りを自動設定するわけですが
その肝心の絞り羽根も固着しており
マニュアル時でも設定した絞り値にならず
最小絞りに絞ったままになってしまっています。
要は全体的に動きが悪く固着している部分も散見される状態です。

まだ整備に取り掛かったばかりの状態です。
上カバー部には巻上レバーも巻戻しクランクも何もないので
(両者とも底部に配置されています)
ネジ3本で簡単に上カバーは外れます。
露出計やその指針挟み込み機構がこの状態でも確認できます。
露出計範囲外になってしまう場合には
シャッターロックがしっかりかかるのですが
この機構も非常に上手くできています。
さらにいうとレンズボード側から設定されたシャッタースピードを
ボディ側に伝える部分もちょっと独特で
「なるほど~よく考えられてるなぁ。。。」と最初に触ったときに
感心したことを思い出しました。
レンズボードとボディの連結部にリード線もなく
これも整備性の良さに一役買っています。
改めてみても非常にしっかり造られたカメラです。

修行時代に散々いじったカメラなので
慣れていることもありますがそれを差し引いても
整備性の良いカメラです。
これからシャッターユニット整備、レンズ清掃、オート調整等々
各部点検整備一式を行っていきます。

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