ニコンFのカメラ修理

今日は「ハサミの日」だそうですよ。
この記念日、本来は美容・理容・洋裁で使うハサミ供養を
行う記念日なのですが
それとは別に「文具はさみの日」も制定されています。
こちらもほうが身近な方も多いかもしれませんね。
私も仕事柄、精密ハサミも文具ハサミも使いますし
他にも用途に合わせて何種類ものカッターや小刀、ニッパーも使いますし
刃物は毎日身近に触れるものです。
ところで、よく「馬鹿と鋏は使いよう」とか
「弘法筆を選ばず」とか
道具の良し悪しは関係なくて
それを使う技術の問題かのように言われますが
これ…ある意味では合っていますが
拡大解釈すると間違いになってしまいます。
特に切れない刃物は使いようでどうにもなるものではなく
無理に使っているとケガをしたり対象を壊してしまうことになります。
ある程度のきちんとした道具をきちんとした技術で使うことが
正しい作業を行う大前提だと思います。
器用さだけで道具の悪さをカバーしようとすると
そのうち痛い目に合います(苦笑)
必要以上に良い道具が必要だとは思いませんが
それよりも道具は消耗品と割り切って小まめに変えるほうが大事かと…
刃物だけでなくドライバーもそうですが
そこそこの品質のものを(そりゃ高価な品質の良いものがいいですが)
切れ味や食い込みが悪くなったと感じた時点で
とっとと交換することが大事だと思います。
いいものを使っているから長く使える…という部分もありますが
道具はパフォーマンスが落ちたら潔く見切ることも大事です。
話がだいぶ逸れました。。。
そんな感じで今日も道具には気を配りながら作業を行います!

さてさて

今日は「ニコンF」のカメラ修理を行っています。
先程の話とは矛盾しますが
カメラを「撮影する道具」とするならば
この「F」あたりはメンテナンスを行いながら
いつまでも使えるもののひとつだと思います。
もちろん油脂類やモルト、植毛紙等は消耗品なので
定期的に交換を行う必要がありますが
機械的な部分はこれでもかといわんばかりの
オーバークオリティな部品で構成されており
油切れを起こさずに通常の使い方をしている限り
いわゆる「壊れる」ということはないと思います。
もちろん細かい精度の狂い等は少しずつ起こってきますので
定期的に調整は必要です。
あ、ただ…ガラスプリズムの銀蒸着だけは
経年劣化に勝てないようです。
接眼部周りのモルトに影響される腐食は防ぐことはできますが
プリズム頂点部等の腐食はいかんせん防ぐことは難しく
個体差がもちろんありますが
蒸着が剥がれたプリズムはもう交換部品もございません。
(再蒸着という手段もありますが
当店では行っておりません)

お預かりしている「F」は後期モデルです。
一通り動作はしている状態で
シャッタスピード等も幕軸の清掃と若干の調整で
問題ない精度を確保できそうです。
ボディと一緒にフォトミックFTNファインダーと
アイレベルファインダーをお預かりしています。
フォトミックFTNファインダーの露出計はほぼ動いていない状態で
ここは残念ながら修理不能となります。
プリズムには接眼部モルト由来と思われる
腐食が確認できここはできる限りこれ以上広がらないように
できる限りの処置を行っていきます。
アイレベルファインダーの方は大きなプリズムの腐食もなく
良い状態です。ただ内部のモルト等がどうなっているか
判らない状況なのでこちらも分解して
一通りの整備清掃を行っていきます。

ブラックの「F」は精悍でカッコ良いですねぇ
塊感がギュッと凝縮された感じで
何とも精密感が強調されているような気がします。
まだ現状を確認しただけの状態です。
これから本格的に分解整備に取り掛かっていきます。

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