キヤノンF-1のカメラ修理

今夜はみなさんご存じの通り「クリスマスイヴ」ですねぇ
毎年、同じようなことを書きますが
「eve」は「夜・晩」を意味する古語「even」から来たもので
「クリスマスの夜」という意味になります。
キリスト教会暦では日没が一日の始まりであり
クリスマスは24日の日没から25日の日没までとなるので
その間の夜である24日の夜のことを「クリスマス・イヴ」と呼びます。
日本では「クリスマス(12月25日)の前夜」と
認識されることが多いのですが
正しくはその言葉通り「クリスマス当日の夜」となり
「クリスマス・イヴ」は既に「クリスマス」に含まれています。
…なので今日日没から明日の日没までが
楽しい楽しいクリスマスなのです!ヒャッホー!!!
…いや、もちろん私は普通に仕事していますし
ここ十数年安定の「クリぼっち」ですが、何か???(苦笑)
今更関係ないのですが
だいたい社会人になってからずっと思ってるけど
この年の瀬のぶち忙しい時期に
クリスマスだなんてイエスさんはなんて間の悪いときに生まれてきたんだ(笑
11月とか2月とかにしてくれればいいのにねぇ

さてさて

本日は「キヤノンF-1」のカメラ修理を行っています。
キヤノンが社運を賭けて開発した
キヤノン初のプロ向け最高級一眼レフ機です。
この分野では完全にぶっちぎりだった
ニコンF・F2の独走に歯止めをかけるために
生まれてきたと言っていいカメラです。
このF-1の誕生により
この後からずーっと続くニコン・キヤノンによる
シェア争いが本格化していくわけですね。
F-1と言えども全くゼロから造られたわけではなく
基本的には当時のFシリーズをベースに作られています。
特にシャッター周りはFX,FTあたりとかなり似通っており
油切れで動きが悪くなると
「ギャイン」といった鳴きが出てくることも共通です
(Aシリーズで有名なシャッター鳴きとは
原因も音が出る箇所も異なります)
横走りのフォーカルプレーンシャッター自体が
既に煮詰められつつある技術なので
このあたりが共通になるのは当然といえば当然ですね。
ただし、さすがに部品強度は普及機と全く異なり
ひとつひとつの部品や造りは
タフな使用に応えられるように非常に丈夫にできています。
…とはいえ後述しますが50年も経過すれば
弱点もそれなりに存在します。

お預かりしている「F-1」は
まずシャッター周りの動きが悪い部分が多く
1/2000、1/1000でシャッターが開きません。
加えて露出計のSW部に接触不良があるようで
露出計が不安定な上に2段以上オーバーな値を示します。
バッテリーチェックも非常に不安定で
指針が一定の値を指しません。
シャッターは幕軸の汚れ等に加え
シャッターダイヤル下の調速カム部分にも動作不良があるようです。
F-1といえばSS不良時にはシャッターバウンドが起こっていることも多く
それらの原因となるのが
F-1の数少ない欠点といえる幕ブレーキです。
現行モデルだった頃や交換部品で対処できる間は良かったのですが
まず幕ブレーキの素材が経年劣化に弱く
さらにブレーキ動作部も動作不良が起きやすい部分です。
ここがキチンと作動しないと
小手先でいくら幕速を調整しようが根本的な解決になりませんし
精度も確保できません。
今回も整備している間に動きが悪くなる症状が出てきたので
徹底的に幕ブレーキ周りの整備調整を行いました。
露出計関連のSW接触不良は50年経ったカメラだと考えると
致し方ない部分です。しっかり接点の磨き・清掃を行ないます。
さらに露出計は抵抗の交換で最適な値に調整します。

今回は問題ありませんでしたが
ファインダープリズムにトラブルが多いカメラでもあります。
まずその低いファインダーカバー下には
巨大な座布団上のモルトが使われており
それが加水分解することによりプリズム腐食を誘発します。
さらに主プリズムに露出計表示用の小プリズムが
接着されているのですがこの小プリズムが
欠けたり割れたりしていることが多いのも特徴です。
残念ながらそこに関しては交換部品がないため
対処不可能になります。
今回の「F-1」はそういう問題はなく
整備後は非常に良い状態になっています。
SS精度も全く問題なく安定しています。
キヤノンのカメラはこの時代からやはり洗練されたスタイリングですね
いつも書きますがどこから見てもカッコいいカメラです。

↓ をクリックすると「東京フィルムカメラ修理工房」のホームに戻ります。