日別アーカイブ: 2022年5月14日

ミノルタフレックスⅢのカメラ修理

今日は「温度計の日」なのだそうです。
水銀温度計を発明した
ドイツの物理学者ガブリエル・ファーレンハイトの
誕生日に由来する記念日です。
温度計…当店には昔ながらのアルコール温度計がありますが
(アルコールとは言いますが実際は着色された白灯油)
これも最近あまり見なくなりましたねぇ
子供の頃に実家に水銀温度計が合って
色が赤い普通のアルコール温度計しか見ることがなかったので
当時、珍しがっていた記憶があります
そうしたらそれを見たじいさんが物置の奥から
青色に着色されたアルコール温度計を出してきて
「これもキレイだねぇ」なんて
言っていたことを思い出しました(笑
ところでファーレンハイトと言えば温度計よりも
やはり華氏(ファーレンハイト度)の提唱ですよねぇ
日本だと摂氏(セルシウス度)が当たり前のように使われていますが
英語圏ではいまだに華氏が使われているところも多いのですよね
速度でいまだにマイルを使ったり距離でフィートを使うようなものかな…
ちなみになぜ漢字表記が「華氏」となったかというと
ファーレンハイトの中国音訳として
「華倫海特」と当てたことからだそうです。
(「氏」は人名に付ける接尾辞)
摂氏はセルシウスの中国音訳「摂爾修斯」からだそうです。

さてさて

本日は「ミノルタフレックスⅢ」のカメラ修理を行っています。
ミノルタフレックスシリーズは
国産としては最初期に造られた二眼レフのシリーズです。’(1937年)
「Ⅲ」はその最終モデルにあたり1954年に発売されています。
その前年には「ミノルタフレックスⅡB」の普及版として
既に「ミノルタコード」が発売されていて
そこからミノルタコードオートマットを経て
ミノルタオートコードに変遷していきます。
「ミノルタフレックスⅢ」は当時の最高級機といえるポジションで
レンズは評価の高いロッコール75mmF3.5を搭載し
シャッターユニットは最高級のセイコーシャラピッドで
SSは1/500~1s・Bとなります。
前モデルの「ⅡB」と同じくファインダースクリーンの中心には
凸レンズが貼り付けられピント合わせも行いやすく
SS・絞り表示はビューレンズ上の窓に集中表示されるようになりました
オートコードもそうですがこれは本当に便利で使いやすいです。
普及版とされた「ミノルタコード(オートマットも含む)」では
採用されなかった機能です。

お預かりしている「ミノルタフレックスⅢ」は
おそらくご依頼様のご実家とかで
かなり長い間眠っていた個体かと思われます。
外装にもサビや塗装剥がれが多く
レンズ・ファインダーはカビや汚れでかなり酷い状態です。
二眼レフではお決まりのファインダーミラーは劣化で
かなり激しく曇っておりスクリーンの汚れも合わせて
とてもとてもまともにピント合わせのできる状態ではありません。
シャッター羽根も粘ってゆっくりしか動作できず
スローガバナも固着してしまっています。
絞り羽根も粘り気味で絞り設定レバーが重く感じます。
この状態で動かしていると羽根が破損する可能性もあるので
ある程度状況が確認できたら
なるべく動かさないようにしておきます。

現状では非常に問題が多く普通に使える状態ではありませんが
長らく放置されていた故の動作不良と汚れが主なトラブルで
どこかが破損しているとかはないようです。
つまりしっかり整備してスムーズに動くようにして
レンズやファインダーをしっかり清掃してやれば
普通に使える状態にはなるということですね。

ファインダーミラーだけは清掃で何とかなるレベルではなく
腐食といってよいほどのクモリ具合だったので
これは表面鏡を切り出して新品と交換しました。
テイクレンズには後玉の表面と
前玉の最後部にかなり強烈なカビがこびりついており
一部コーティングを侵食していたため
カビ跡が若干残りましたが
撮影にはほぼ影響がないほどにはクリアになっています。
シャッターの動作は精度も含め全く問題ないレベルになっています。

これで当分の間、安心して使っていただけると思います。
実際に撮影に使われるのはかなり久しぶりだと思われますが
新しい現代も是非そのレンズでフィルムに焼き付けてほしいと思います。

↓ をクリックすると「東京フィルムカメラ修理工房」のホームに戻ります。