キヤノンFTbのカメラ修理

今日は「秋分の日」ですね。
よく昼と夜の長さが同じ。。。と言われますが
正確には昼が少し長いのですよね。
太陽が真東から登って真西に沈む日です。
秋分の日は天文学上で毎年算出される日ですが
天文学に基づいて年ごとに決定される
国家の祝日は世界的にみても珍しいのだそうです。
お彼岸の中日でもありますね。
私が幼い頃はまだじいさんばあさんも元気で
お彼岸は必ず墓参りがありました。
うちの実家から灰ヶ峰という山の中腹にある墓所までは
結構な上り坂を歩いて1時間弱ほどで
なかなかハードなのですが
子供の頃はピクニック気分で喜んで墓参りに行っていました。
実際、墓が山の中なのでいろんな虫や生き物がいて
子供としてはなかなか楽しい場所だったのです(笑)
たまには掃除しにいかないとなぁ。。。年末かな。。。

さてさて

本日は「キヤノンFTb」のカメラ修理を行っています。
当時の最高級機である「F-1」の弟分ともいえる中級機で
F-1と多くの共通部分を持つ機械制御シャッター機です。
F-1と多くの共通部。。。とか書きましたが
いわゆる「Fシリーズ」は最初のFXからF-1まで
基本的な構造はほぼ共通です。
さすがに細かくいろいろ変更されているので
部品類には互換性がありませんが。。。
Fシリーズの中で唯一、基本構造から異なるのは
コパルシャッターを搭載する「EF」だけですね。
FTbは1971年の発売開始で
同じ年にデビューしているF-1と同様に
FDレンズを使用することにより開放測光に対応したモデルです。
言い方を変えると前身のFTを開放測光に対応させたものが
Ftbと言っても良いと思います。
2年後の1973年にはマイナーチェンジが行われます。
このマイナーチェンジ後のモデルを「FTb-N」と
呼ぶ場合もあります。
ボディの刻印はもちろん「FTb」のままですが
外観上もセルフタイマー部のデザイン等に変更が加えられ
巻上レバーやシャッターボタンのデザインも変更されました。
機能的にもファインダー内にシャッタースピード表示が追加され
使いやすさが進歩しています。
これから後のキヤノン一眼レフは「Aシリーズ」に
バトンを引き継がれていくのですが
キヤノンの機械制御シャッターのマニュアル機としては
このFTbが実質最終モデルとなります。
(FTbをベースとするTXやTLbもFTbの一種と考えると。。。)

お預かりしているのはそのマイナーチェンジ後の
「FTb-N」です。
比較的キレイな外観で一通りの動作はしているのですが
シャッター幕(先幕・後幕)のバランスが大きく崩れていて
1/1000、1/500は全く開きません。
1/250で何とか半分だけ開き
1/125でとりあえず全体が開くといった感じです。
こういう症状が出ているときは幕軸の汚れだったり
油切れが原因でキヤノンFシリーズの場合は
シャッター音にも耳障りな金属音が目立ってきているものも多いのですが
このFTbはシャッター音自体は妙に良い音で
油切れっぽい感じがありません。
幕テンションを意図的に弄られている可能性がありそうです。

FTbはプリズム抑え部のモルトを原因とする
プリズム腐食が多いカメラですが
このFTbは過去に明らかにプリズム交換が行われています。
やはり分解歴のある個体ですね。
おそらく分解されたのは比較的近年だと思われ
プリズムや接眼レンズはキレイなのですが
コンデンサレンズにはカビや曇りが見られ
清掃した痕跡が全くありません。。。ちょっと中途半端な状態です。
どんな弄られ方をしているかわからない部分もあるので
これから分解を進め細かくチェックしていきます。
致命的な問題はないとは思いますが。。。。
露出計もこの機会に1.5V仕様に調整しなおします。
受付時にはご依頼者様がご用意された
無変換電池アダプタ+SR44が
装着されていましたが
このままだと1.5段ほどアンダーになってしまいます。
もちろん同様にバッテリーチェック機構も再調整いたします。
露出計もシャッターも信頼して使えるレベルの
精度出しを行っていきます。

↓ をクリックすると「東京フィルムカメラ修理工房」のホームに戻ります。