今日もいろいろな記念日が制定されているのですが
当店としてはこれに触れないわけにはいかないですね。
今日は「カメラ発明記念日」です。
1839年のこの日にフランスの画家・写真家の
ルイ・ジャック・マンデ・ダゲールが
写真機を発明したことに由来しています。
いわゆる「ダゲレオタイプ」といわれる
「銀板写真」です。
銀メッキをした銅板などを感光材料とします。
もちろん今の気軽に撮れる写真とは全く異なりすべてが大掛かりです。
銀板の準備や撮影後の管理も大変ですが
初期のダゲレオタイプは感光材の感度も低い上に
レンズも暗かったため露出時間(今でいうシャッタスピード)が
10~20分かかったのだそうです。
数年後には明るいレンズが開発され劇的に露出時間は短縮されますが
それでも1~2分、場合によっては数秒かかったのだそうです。
現在の最新のデジカメで1/32000で撮影できる時代が来るなんて
この頃では想像もできなかったでしょうねぇ…
まぁ当店で扱うフィルムカメラはそこまでではありませんが
気軽に明るいところで装填できて
手持ちで撮れるなんて言うのはこの時代から随分後になります。
そう考えると私たちは本当に恵まれていますね。
さてさて
本日は「キヤノンデミ」のカメラ修理を行っています。
ハーフ判カメラといえば
やはり「オリンパス・ペン」の知名度が圧倒的に高く
次いで「リコー・オートハーフ」かな…と
個人的には思っているのですが
キヤノンの「デミ・シリーズ」を忘れてはいけませんね。
「デミ」とは英語で「半~」にあたる接頭語です。
フランス語の「demi」(半分)に由来します。
まさにハーフ判カメラそのものを表すネーミングなわけですね。
「デミ・シリーズ」も初代のデミから
派生して様々なモデルが存在するのですが
今回は一番最初に発売された無印の「デミ」です。
シャッターユニットはプログラムシャッターのセイコーシャLで
絞りとシャッタスピードの組み合わせは任意では選べず
カメラ任せとなります。
ただ露出設定がプログラムオートではなく
セレン式の露出計の指針に露出ダイヤルを手動で合わせて
露出を決定させる方式です。
この辺りがフルマニュアルで全て任意に設定できる「ペンS」や
逆に全て露出をすべて「オート」で任せられる「ペンEE」に
比べると少し中途半端なのかもしれません。
それでもこれはこれで使い方に慣れてくると
自分で逆光補正とかもできますし
大雑把に合わせてフルオート的に使うこともでき
実際には不便さを感じるようなことはありません。
何といっても利点はこの類のハーフ判カメラには珍しく
きちんと巻上がレバー式なのです。
レンズ付きフィルムのようなダイヤル式の巻上に比べると
楽ちんさも気持ちよさもレベチです。
またこのデミの巻上は高級一眼レフやレンジファインダー機と比べても
相当上位に来る軽やかさです。
また実像式ファインダーにも贅沢にプリズムが使われおり
接眼レンズの状態の良いものであれば
非常にクリアな見え心地です。
きちんとレンズの真上に
ファインダー対物レンズが配置されているものも
キヤノンのこだわりではないかと思われます。
初代デミは初期のものだけが真鍮製のボディ外装で
その後アルミ製に変更されるのですが
お預かりしているのは初期の真鍮製外装です。
比べてみると少しだけ真鍮製の方が重いのですが
それほど変わりはありません。
それよりも外装の色がアルミの方が少し黄なりな感じで
そちらのほうがわかりやすい違いです。
心配されるのはやはりセレンの状態ですが
最初受付時に手に取ったときには
露出計が全く動かず「あぁ…これはダメかも…」と思ったのですが
しばらくいろいろチェックしていると
ふいに指針が動き始めました。
どうやらセレンの基部の接触不良のようで
セレンを軽く指で押さえてやると
露出計は元気に反応します。
これであればセレンそのものは大丈夫そうです。
他は露出設定リングがごりごり妙に重いことと
若干シャッター羽根に粘りもあるようです。
必ずと言ってよいほど酷いことになっているフィルム室モルトは
既に張り替えられているのですが
張り替えられる前は相当腐食していたらしく
モルトが触れる側のボディ側塗装がボロボロです。
ここはできる限りの修復を行います。
画像は整備完了後のものです。
露出計は安定して動作するようになり精度も問題ございません
巻上は非常に軽やかで官能的に気持ちよい状態です。
デミは接眼レンズの劣化したものが多く
曇っているもはどうにも対処できないのですが
今回はわずかにくもりが見られるものの
目立つほどではなく他部分の清掃もあり
非常にクリアなファインダー像を見ることができます。
シャッターももちろん何の問題もなく
かなり程度の良いデミになったと思います。
残すは最終チェックのみですが
是非、ご依頼者様にもこの気持ちよく使えるデミを
お楽しみいただきたいと思います。
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