キヤノン7のカメラ修理

今日は二十四節気でいうところの
「啓蟄」ですね。
この日になると随分春らしさも感じる頃になってきます。
大地が温まり、冬眠をしていた地中の虫が
春の陽気に誘われて穴から出てくる頃で「啓蟄」とされています。
「啓蟄」の「啓」には「ひらく、開放する」の意味があり
「蟄」には「虫が土の中に隠れる、閉じこもる」の意味があるそうです。
今日も都内は良いお天気で
気温も18℃くらいまで上がるようです。
夜、ウォーキングしていても
染みわたるような冷たさはめっきり感じなくなってきましたね。
いよいよ春本番です。
過ごしやすい季節が少しでも長く続いていくれればいいですね!
(近年はやっと過ごしやすくなってきたと思ったら
すぐに夏や冬になってしまうような気がするので…(苦笑))

さてさて

外は気持ちの良いお天気ですが
環退社もちろん店に閉じこもってお仕事しますよ(笑
本日は「キヤノン7」のカメラ修理を行っています。
1961年発売のレンズ交換式レンジファインダー機です。
戦前の「カンノン」から始まった
キャノンレンジファインダー機の集大成と言えるカメラです。
それまではローマ数字だったモデル名を
アラビア数字に改め「7」となりました。
距離計連動式35mm判カメラで
初めてシャッター速度と連動させた
セレン光電池式の露出計が組み込まれたカメラです。
ファインダーのブライトフレームは
35mm/50mm/85mm/100mm/135mmの5種類の枠を切り替えができます。
ねじ込みLマウント外周への外爪バヨネットの追加により
史上最高の明るさを持つ「キヤノンレンズ50mmF0.95」や
望遠レンズ用ミラーボックス2型を装着可能にしています。
機能面・スペック面で最高峰を謳う反面
「P」生産の頃から進められている生産の効率化による
コストダウンはさらに進み
50mmF1.8付きで46700円を実現し、
メーターと50mmF1.8を付属した場合の「P(ポピュレール)」の
53500円より廉価ともなりました。
これまでのレンジファインダー機で培ってきた実績もあり
「7」はキヤノンレンズ交換式レンジファインダーカメラ史上
最多の生産台数を記録し
国産レンズ交換式レンジファインダーカメラはキヤノンの独擅場となりました。
しかしながら国産メーカーで言えば
既に「ニコンF」は登場から数年経過しており
ペンタックスからはS2やS3がヒットしており
ミノルタからもSR-1,2が発売されて好調でした
この「7」のヒットにより
次世代一眼レフの開発には立ち遅れることになってしまいました。

非常に完成度の高いレンジファインダー機であることに
間違いはありませんが
さすがに登場から60年が経過し
経年劣化や長年の環境の差により
程度にもかなり個体差が出てきてしまっていると思います。
お預かりしている「7」は
保存環境は良かったものと思われますが
かなり長い間、眠っていたとみられ
あちこちに動作不良が出てきている状態です。
高速シャッターは全く精度が出ておらず
スローシャッターではガバナが粘っている状態です。
ファインダー内にはかなりのカビが見受けられ
距離計にズレも出ています。
セルフタイマーも油切れで動作不良となっています。
セレン光電池はやはり起電力に劣化が見られます。
起電を復帰させることはできないので
ここは表示板側でできる限りの調整を行い
通常の使用で問題ない状態にしていきます。
他はとにかく駆動部分を清掃してサビ・汚れを落とし
その後、最小限の注油を行い
調整を行う通常整備で何とかなると思われます。

…というわけで画像は一通り整備が完了した状態です。
駆動部分にかなり手を入れているので
新しい油が馴染んで動きが安定するまで少々様子見の段階です。
全体的に油切れと汚れで鈍重な動きだったイメージもなくなり
巻上もシャッター音もキヤノン機らしい
非常に軽快な動きになっています。
これであれば自信もって気持ちよく使っていただけると思います。
いい季節にもなってきましたが
快調な状態で春を写し込むのは
おそらく何十年ぶりなのではないかと思います
ご依頼者にもカメラにも日本の春を満喫していただきたいと思います。

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