キヤノンF-1のカメラ修理

今日は「エベレスト日本人初登頂記念日」だそうです。
日付は登山家・松浦輝夫と冒険家・植村直己が
標高8848mの世界最高峰の山「エベレスト」に
日本人として初めて登頂に成功した1970年(昭和45年)5月11日から。
エベレストは今やお金さえしっかり出して
(かなり高額ですが…)
登頂可能なだけのトレーニングがクリアできれば
ガイド付きで誰でもチャレンジできる山になってはいますが
標高8000m超の世界はそう簡単に挑戦できる領域ではないですよね。
酸素は地上の1/3で通常、人は生命を維持することができなくなります。
長く滞在することで身体機能や意識の低下をもたらし最終的には死に至ります。
そこは「デス・ゾーン」と呼ばれる死の世界だそうです。
標高8848.86 mは想像を絶する世界でしょうね。
でも8kmなんですよね。
平地で水平に移動するだけなら普通に歩ける距離です。
いや水平距離と標高じゃ全く比較できないのはわかっていますが
人間が住むことにできる領域って
ものすごく上下に薄いんだなぁ…と思います。
ちなみにどこまでが空でどこからが宇宙かというのは
いろいろな考え方や諸説あるのですが
一般的なのは地表から100kmまでと考えるそうです。

さてさて

本日は「キヤノンF-1」のカメラ修理を行っています。
F-1もコンスタントに修理依頼のあるカメラですが
ここ最近、マイナーチェンジ後の「F-1N(後期モデル)」が
多かったのですが
今回はヒサビサに前期モデルです。
基本的な構造は前期F-1もF-1Nも大きな違いはありませんが
デザイン的な箇所から機能的なことまで
細かい仕様変更は十数か所にも及びます。
個人的にこれは大きな違いかな…と思うのは
やはり巻上角の変更かと思います。
F-1はキヤノンとしては初のプロ仕様の一眼レフなので
耐環境性能もかなり重視されています。
いえ、冒頭でエベレストの話が出たこともあって
思い出しただけなのですが
F-1もマイナス30℃から60℃までの温度域に耐えられるように
造られています。
もちろん新品時の場合ではありますが…

お預かりしている「F-1」は
やはりかなり長い間眠っていた期間もあったとみられ
全体的に動きに問題がある状況です。
まず、シャッターは動作はしていますが
1/2000、1/1000では全く開きません。
先幕と後幕の幕速バランスが大きく崩れており
高速シャッター時には後幕が先幕に追いついてしまう状態です。
幕軸の汚れや油切れが原因かと思われます。
低速シャッターは低速シャッターで
スローガバナの粘りが見られます。
こちらも汚れや油切れですね。
露出計も動作はしていますが
それなりに狂いも出ています。
やはり全体的に整備が必要な状態です。
ただし、どこかが破損しているとかの
大きなダメージはない状態なので
しっかり整備して動きを良くしてやれば
あとは微調整で本来の姿に戻ると思われます。

装着されているレンズは当店のテスト用レンズです。
一通りの整備が終わって少し新しい油が馴染むまで
様子見をしている状態です。
高速シャッターから低速シャッターまで
全く問題なく精度も出ています。
もちろん露出計も同様です。
F-1やFTbは幕ブレーキに問題を抱えている個体が多く
それが原因で幕のバウンドが起きている個体も多いのですが
今回はバウンドこそなかったのですが
やはり幕ブレーキには少々問題があり
できる限りの整備と調整を行っています。
F-1はこの幕ブレーキが少々泣き所ですね…
部品の精度や堅牢性はさすが最高級機で
やはり他のクラスのカメラよりワンランク上と言えると思います。
でも何とってもF-1は文句ナシに
めちゃくちゃカッコいいですよね。

↓ をクリックすると「東京フィルムカメラ修理工房」のホームに戻ります。