キヤノネットのカメラ修理

今日は「ことばの日」だそうですよ。
「こ(5)と(10)ば(8)」と読む語呂合わせからですね。
言葉について考え言葉を正しく使えるように心がける日だそうです。
言葉ですべてが伝わるとも限りませんが
ちょっとした言葉使いで思いもよらぬ伝わり方をしてしまったりして
困ったことは誰しもあるのではないかと思います。
一度出してしまった言葉はあとで訂正しても
印象は残ってしまいますからやはり言葉使いは大事ですし
慎重にとも思うのですが
あまり言葉選びにばかり気を使っていると
本当に伝えたいことが伝わらなかったりと…本当に難しいですね。
聞き取る方の考え方や感じ方でも伝わり方は変わるので
なかなかそのあたりは完璧にならないのかもしれません。
加えて…歳のせいか思うような言い回しが
昔ほどレスポンス良く出なくなってしまったような気もします
でもプライベートで言葉を交わすことも
昔ほどないのでそのへんはあまり問題ないのかもしれません…(苦笑

さてさて

本日は「キヤノネット」のカメラ修理を行っています。
キヤノネットシリーズにもいろいろなモデルがありますが
今回は1961年発売の初代キヤノネットです。
キヤノン初のいわゆるコンパクトカメラでもあります。
(実際はこの時代のコンパクトカメラは
全く「コンパクト」ではありませんが…)
45mmF1.9の大口径レンズ、セレン光電池使用の露出計内蔵に
その露出計と連動するシャッタースピード優先オート露出
(光量過不足時にはシャッターロックもかかります)
シャッターはコパルSVでB・ 1s~1/500までをカバー
この時代のレンズシャッター機としては
ほぼ最高峰の性能を持ちつつ
当時のキヤノンの社員たちが自分たちの月給で
買えるカメラを望んだことから
18,800円という性能に比して非常に安価なカメラとして登場しました
安価だから安っぽい部分があるわけではなく
分解してみてもわかりますが使われている部品の材質や精度も
全く安っぽい部分はありません。
コストダウンの大部分は生産の効率化です。
当然ながら社会現象ともいえる爆発的大ヒットとなり
発売直後は2週間分と見積もっていた在庫が数時間で売り切れ
入手が非常に困難になるという事態も引き起こしました。
キヤノネットの登場はカメラの低額化・高機能化に
付いていけなくなった多くのカメラメーカーが
倒産・撤退するきっかけとなったといわれています。

それほどのヒットとなった初代キャノネットなので
現存台数はもちろん多く
当店にもコンスタントに修理依頼のあるカメラです。
今回お預かりしてるキヤノネットは
外観はなかなかキレイなのですが
いくつか大きな問題を抱えています。
まずお決まりのシャッター羽根固着で
レリーズしてもシャッターが全く開きません。
これでは全く写真は撮ることができません。
加えてファインダーを覗いてい見ても
二重像が見えません。
多少の曇りや汚れはありますが
ブライトフレームや二重像が出るべき部分の枠は確認できるのですが
肝心の二重像は全く見当たりません。
おそらく虚像を反射するミラーが脱落してるものと思われます。
心配されるセレンは状態は良く元気に起電していますが
ちょっと元気が良すぎ(正確に言うと抵抗の劣化)で
指針が振りすぎで明らかに露出が2段近くアンダーになってしまいます。
どれも致命的なトラブルではないですが
このままだと写真が撮れる状態ではないので
全体的に整備を行っていきます。

巻上は底部トリガー式、巻き戻しクランクも底部なので
上カバーは非常にシンプルです。
レリーズボタンとフィルムカウンターのみの
スッキリとしたカバー上に筆記体の「Canonet」の
文字がなんともオシャレでいいですね。
いつも思いますが中身の構造も非常に良くできたカメラで
レンズボードからのSS伝達機構とか
露出過不足時のシャッターロック制御
オート露出の絞りコントロール等々
非常によく考えられてうまく造られているカメラです。
最初にも書きましたが「コンパクトカメラ」いうには
少々大柄ですがその分内部スペースには余裕もあって
整備性も非常に良好です。
個人的にも非常に好きなカメラのひとつです。

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