トプコン35-Sのカメラ修理

今日は「人口調査記念日」なのだそうですよ。
1872(明治5)年のこの日に
明治政府による日本初の全国戸籍調査が
行われたことが由来となっています。
この調査による当時の人口は3311万825人だったそうです。
2015(平成27)年の国勢調査による日本の総人口は
1億2709万4745人で、9000万人以上増えたことになるそうです。
おおよそ150年で4倍弱になったわけですね。
これからは人口減が予想されていますが
まだまだ日本の人口は多いのですねぇ…
年代構成は言い始めるといろいろあるので
さておいて、もし150年前と同じような人口で
周りに今の1/4くらいしか人がいなかったらと思うと
例え都内だったとしても
かなり寂しいものがありますし
おそらく私のようなニッチな商売はやっていけないですね(苦笑)

さてさて

今日は「トプコン35ーS」のカメラ修理を行っています。
トプコン35シリーズはこの「S」以前は
目測のシンプルなレンズシャッター機でありながら
レンズ交換可能な少々変わったカメラでした。
今回の「S」はそこからガラッと変わって
レンジファインダー搭載で
トプコール4.4cmF2レンズを固定式にした
比較的この時代のオーソドックスなカメラとなりました。
発売は1956年です。
一見、この時代に多いレンズシャッター機に見えますが
いろいろとトプコンらしいこだわりというか
「35-S」ならではの特徴も多く見られます。
まずファインダーは贅沢にプリズムを使用した
等倍ファインダーです。
コニカⅢAあたりの整備時にもよく書きますが
等倍ファインダーは両目を開けて
ファインダー外の様子もうかがいながら
両目でみる視野の中にぽっかり浮かんだ
ブライトフレームでフレーミングができ
さらにそのまま距離計二重像でピント合わせも行えるという
一度この使い方にはまってしまうと
なかなか抜けられなくなる気持ち良さが特徴です。
片眼でファインダーを覗きながら両目で視野を見ることに
少しばかり慣れが必要が部分もありますが
それほど慣れることに時間はかからないと思います。
加えてこのファインダーの見え方も非常に明るくてクリアで
片眼でじっくり見てもすこぶる気持ち良さです。
そして巻上はフィールがまた独特なダブルストロークです。
さらにこの時代としては先進的なセルフコッキングです。
実は前身の「トプコン35A/B」でも
既にセルフコッキングを搭載していました。
まだまだ50年代のカメラは巻上とシャッターチャージは
別々に行うカメラが多かった中でこれは本当に先進的ですし
実際の使い勝手も格段に良くなります。
シャッターユニットは当時の最高級ユニット
「セイコーシャMX」でB・1秒~1/500までカバーします。
ただしセイコーシャのシャッターなので
例のごとく1/500は別バネ使用の特殊なSSです。
巻き上げてからの1/500は実質不可能ですし
壊れる可能性が非常に高いので
1/500セットは必ず巻き上げる前に行います。

前置きが長くなりましたが
お預かりしている「35-S」はまずはシャッターがかなり粘っていて
SS設定に関わらず羽根がゆっくりと開いていくような状況です。
もちろんこのままでは撮影に使えません。
通常の明るさであれば全ての写真が真っ白になってしまうと思われます。
ここのところレンズシャッター機が続いているので
毎日羽根粘りや固着について書いているような気がしますが
やはり今回も絞り側にも粘りが見られ
今のところは動きに問題はないものの
絞りリングの動きは重めです。
固着してしまった場合はシャッター羽根は
動かないだけで済みますが
絞り羽根の場合は人力で絞りリングを無理に動かすと
羽根破損に繋がる恐れもありますので
絞り羽根の粘りには敏感に対処します。
他、各部の動きにも若干粘りが見られることと
距離計二重像は大きく縦ズレしています。
こうなるとせっかくの快適な等倍ファインダーも台無しですので
しっかり調整して快適なフレーミング&ピント合わせが
行えるようにしていきます。

対物レンズ側から見ると
ミラーっぽくみえるプリズムファインダーが
特徴的ですが何ともカッコ良いですよね。
まだ取り掛かり始めですが
これからまずはシャッターユニット周りの
清掃整備から取り掛かっていきます。
ここのところ同じような年代のカメラが続いているので
毎日のように言いますが
50年代の国産カメラは本当に美しくて個性的で
魅力的なモノが多いですよねぇ…
このトプコンも個人的に欲しくなってしまうようなカメラです。

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