ペンタックスS2のカメラ修理

今日は「エベレスト登頂記念日」だそうですよ。
ニュージーランドのエドモンド・ヒラリーと
チベット人シェルパのテンジン・ノルゲイが
世界で初めて世界最高峰のエベレスト
(チョモランマ)の登頂に成功した日ですね。
標高8848m、言わずと知れた世界最高峰です。
富士山の3776mより倍以上高いのですものね。
山頂付近の酸素濃度は下界の1/3程度です。
低温やジェット気流等、他にも過酷な環境ではありますが
この酸素濃度の低さが体に与える影響は相当深刻だと予想されます。
それでも海抜たった9km弱なんですよね。
高さなので単純に比較は全くナンセンスなのですが
水平方向に9km移動であれば私の毎日のウォーキングと
さほど変わらない位の距離です。
人が住める領域というのは
本当に地表のわずかな薄いエリアなんだと実感します。
でも高さと水平方向の距離では本当に全く違いますね。
地上から数mの高さでも足元の状況によっては
めちゃくちゃ怖いですものねぇ…

さてさて

本日は「ペンタックスS2」のカメラ修理を行っています。
1959年発売のカメラです。
ペンタックスの最初カメラである「AP」や
その高級機ヴァージョンの「K」に続いて
普及機として発売されたカメラです。
生産工程や設備の見直し等により大幅に価格を抑えることにも成功し
ヒット商品となったカメラです。
ポジション的には普及機クラスですが
一軸不回転型シャッターダイヤルを採用し
SS最高速こそ1/500ですが使いやすさでは「K」を凌駕し
最終的にはSS最高速も1/1000が搭載されます。
続くS3やSVへと続くAP系シリーズ本流のベースともなり
基本設計に非常に優れたカメラだと思います。

この時代のペンタックス機、AP以降SVまでの機種は
どれもシャッター幕に問題を抱えた個体がほとんどです。
過去に幕交換を行っていない個体であれば
ほぼ間違いなく幕にトラブルを抱えているといっても
間違いではないかと思います。
今回の「S2」も幕の硬化がかなり進んでいて
巻上げてシャッターを切ると先幕は
何とか「ズルズルズル…」という感じでゆっくり出てきますが
後幕はビクとも動かないような状況です。
無理やり後幕を引っ張り出してみると
硬化して幕が激しく波打った状態です。
先幕もかなり硬化が進んでいてこれでは他をどんなに整備しても
シャッターはまともに動きません。
しなやかな新品のシャッター幕と交換を行い
シャッターの設定等を最少から見直して調整を行います。

上カバー裏側にはってある干渉防止用のモルト劣化の悪影響もあって
プリズムも頭頂部に腐食が見られます。
大きなものではないですがせっかく分解しているので
腐食のないキレイな状態のプリズムと交換で対処します。
今回の「S2」は最高速は初期モデルと同じく1/500ですが
比較的後期のモノかと思われます。
シンクロ接点の構造が後のSV等と同様に構造になっています。
こちらのほうがもちろん理にかなっていますが
前期と違って幕の貼り位置に少し気を付けなければ
シンクロのタイミングも狂ってしまいます。
要は元の幕と同じ寸法のモノを切り出して
元の幕と同じところにキチンと貼ればSSも含め
精度は出るはずです。
こう書くと簡単なのですが
それがそれなりに大変なのではありますが…(苦笑)

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