キヤノンFTのカメラ修理

今日は「海の日」で祝日ですね。
海の日そのものが比較的新しい祝日ですが
もともとは「海の記念日」と呼び名で7月20日に制定されていました。
これが1995(平成7)年に「国民の祝日」として
7月20日が「海の日」に制定され、翌1996(平成8)年から実施されます
さらに、2003(平成15)年の祝日法改正(ハッピーマンデー制度)により
日付が7月の第3月曜日となっているのですね。
平年だとこの頃がちょうど梅雨明けの時期に当たり
小中高校では21日から夏休みになるところが多く
まさに本格的夏の幕開けとなる時期ですねぇ
さすがにこの歳になると真夏は暑いだけで
正直なところ本当にイヤなのですが…(汗
あぁ早く涼しい秋が来ないかなぁ…(笑

さてさて

本日は「キヤノンFT」のカメラ修理を行っています。
外光式露出計だった「FX」からTTL測光へと進化し
(TTL測光自体はFTの前にペリックスで実現しています)
この時代のキヤノンお得意のQL(クイックローディング)を
組み込んだカメラです。
通常のTTL測光機と比べて変わっているのが
受光体(CdS)の配置で
よりフィルム面と同様の環境で測光するために
ファインダースクリーンの上部に配置する
コンデンサレンズの内部にハーフミラーを組込み
コンデンサレンズの背後に配置されるCdSに光を送っています。
(通常のTTL測光機は接眼レンズの周辺に
CdSを配置します。)
この構造の為、測光は視野内中心12%の
中央部分測光となります。
この測光方式は後のF-1にも受け継がれます。
測光の理屈が把握できていると
この時代の主流である中央部重点測光より
厳密な測光ができる場合が多く
FT以降、キヤノンは中央部部分測光にこだわりを見せることになります。
シャッター機構自体は基本的にFXから引き継がれたものですが
細かい部分に変更も見られより熟成されています。

お預かりしている「FT」はちょっとレアなブラックモデルです。
シリアルナンバーが上カバー背面ではなく
FTb等と同様に上カバー上面に刻印されており
いわゆる後期モデルと思われます。
当店に修理依頼で入ってくるFTの多くが前期型で
後期型自体がちょっとめずらしのですが
実はFTは前期型と後期型で露出計回路が大きく異なります。
回路がこたなるだけではなく実際の動きにも違いがあって
FTは基本的に絞込測光なのですが
前期型は絞込レバーを押したときにだけ露出計の電源が入り
露出計指針が動きます。
後期型はその絞込レバー連動のSW機構が省略されていて
基本的に露出計連動範囲内(SS・ASAの組み合わせ次第で連動範囲外アリ)では
常に露出計に電流が流れています。
ただし絞込測光なので正しい値を示すのは
絞込レバーを押したときのみです。
通常の明るさで通常のSS・ASA設定であれば
絞込レバーを押していないと露出計指針は上に振り切った状態ですが
絞込レバーを押したときに指針が下りてくるようなイメージです。
前期型だと絞込レバーを押していないときには電源が入っていないので
レバーを押す前は指針は下に下りきっていて
レバーを押したときに上にぴょこんと上がってくるイメージです。
露出計の電源消費は微々たるものですが
後期型は電池の消耗が少しだけ早いでしょうね。

今回のFTも結構な分解品です。
その割には肝心なところには整備がされた形跡が全くありません…
シャッターの動きが非常に悪く
先幕・後幕のバランスが大きく崩れています。
そのため1/1000、1/500はシャッターが開かない状態です。
巻上にも油切れの兆候が見られます。
FX,FT,FPでは非常に心配となるプリズムは
やはりかなり腐食が進んでいて
交換プリズムの確保が非常に困難なのですが
今回は何とかキレイなプリズムを確保できているので
交換で対応します。
キヤノンFシリーズらしいアタックの効いた
歯切れの良いシャッター音が聴けるように
しっかりこれから整備していきます。

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