ニコンEMのカメラ修理

今日は「彼岸の入り」で今日から一週間
いわゆる「春のお彼岸」ですね。
中日となるのは21日の「春分の日」です。
お彼岸といえばやはり「墓参り」というイメージですよねぇ
じいさんばあさんの歩きがまだしっかりしていた時期は
春秋のお彼岸とお盆のお墓参りは
私が大人になってからも外せない年中行事でした。
私の家の墓所は結構な山奥の登山道わきに
ポツンとある感じなので
いわゆる墓地っぽい雰囲気な少なく
子供の頃はちょっとした遠足気分で墓参りも楽しみにしていました。
関東に住み始めてからはこの時期に墓参りに行くことは
さすがにスケジュール上無理があり
春先の墓参りは十数年ご無沙汰していますが
たまにはこの時期の墓所や地元の里山の雰囲気や空気感を
楽しみたいところですねぇ…

さてさて

本日は「ニコンEM」のカメラ修理を行っています。
1980年に国内発売されたニコン初の
エントリーモデルといえるカメラです。
これまでのニコンのラインナップはフラッグシップに
F一桁機が君臨し中級機にニコマートからの流れを汲む
FM/FEが存在するのみの少数精鋭なラインナップでした。
そこに加わったのが絞り優先オート専用機で
エンプラを多用しスペック的にもかなり割り切った仕様の
この「EM」です。
先行発売された海外では商業的にも成功を収めますが
国内ではこれまでの「高級機路線」のニコンのイメージに
そぐわなかった部分もありかなり販売的に苦戦します。
そのデザインのすばらしさや使い勝手の良さが
評価され人気に火が付いたのは
残念ながら生産が完了した後のことになってしまいました。
現在の中古市場ではかなりの人気モデルです
商業的に苦しんだとはいえエントリーモデルで
お求めやすい価格設定だったこともあり
現存している台数はそれなりに多いカメラです。
ただその低価格ゆえにやはり作りが華奢な部分や
プラスチック部品が劣化のため破損している個体も多く
修理依頼もそれなりに多いカメラです。
ただしニコンらしい部分も溢れているカメラで
オート専用機なのに1/90の機械制御シャッターも備え
バルブも電池ナシで駆動することができます。
フレキを多用した時代最先端の電子制御機でありながら
電子部品を原因とするトラブルはかなり少ないほうで
たいていの場合は何かトラブルがあっても修理可能です。

今回お預かりしている「EM」はおそらく過去に
整備分解歴はない個体かと思われます。
一通りの動作はしているのですが
やはり消耗部品の劣化や各部の汚れ、
油切れはそれなりにあり
シャッタースピード、オート制御、露出計は少々不安定です。
そして「EM」はさすがにエントリーモデルということもあり
フィルム室やファインダー周りの遮光を
かなりモルトに頼っている部分が多く
ニコン機にしては大量のモルトを使っているのですが
それが巣全て粘着質に劣化してしまっています。
それがスクリーンに大量に付着しており
ファインダーはとてもとても快適なフレーミングや
ピント合わせはできない状況になっています。
外装は非常にキレイな個体なのですが
やはり全体的に整備の必要な状況です。

まだ上カバーを外しただけの状態です。
これから本格的に分解整備に取り掛かっていきます。
上カバーを外す際に当然ながら巻き戻しクランクと
巻上レバーを外すのですがEMはいつもですが
今回のこの2点の取り外しに苦労しました。
特に巻き戻しクランクはフォークを固定しておいて
クランクを逆回転して外す(大抵のカメラはこのパターン)のですが
その際にクランクねじが固着してそれなりに固い場合
無理して回すと簡単にクランク基部樹脂部品が破損します。
ここが破損している状態のEMも非常に多いです。
今回もネジ部は結構強烈に固着している状態で
それでも力任せに回すわけにはいかず
かなり時間をかけて少しずつ固着を緩めて外しました。
カメラ修理に短気は大敵です。
うまくいかないときほど落ち着いて慎重に作業を行います。
巻上レバーも留めネジを外してもビクとも動かず
こちらも苦労しました。
カメラ修理に「回す」という作業は非常に多いのですが
いろいろな要因で「回るはずなのに回らない」ことが非常に多いのです。
こういったときこそ焦らずに深呼吸して落ち着いてから
作業を進めていきます。

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