オリンパスペンEEDのカメラ修理

今日は「電気記念日」だそうですよ。
記念日の由来が少しややこしいのですが
1878(明治11)年のこの日に
工部省電信局は万国電信連合に加盟する準備として
東京・銀座木挽町に中央電信局を開設したのだそうです。
そして同日にその開局祝賀会が東京・虎ノ門の工部大学校
(現:東京大学工学部)の講堂で開催されることになりました。
会場に電気灯を使用するよう、工部卿・伊藤博文から
特に命ぜられていたイギリス人の工部大学校ウィリアム・エアトン教授は
グローブ電池50個を用いて、講堂の天井に設置されたアーク灯を点灯するため
自ら難しい調整に当たり
エアトン教授の合図とともに50個のアーク灯が点灯されたのだそうです。
目もくらむような青白い光がほとばしり、講堂をくまなく照らし出しました。
その場にいた来賓たちは「不夜城に遊ぶ思い」と驚嘆の声を上げたといいます。
これが日本で初めて点灯された電灯であり
それを記念して今日が「電気記念日」と制定されたそうです。
(制定されたのは1927(昭和2)年に開催された日本電気協会の総会にて)
今でこそ当たり前のように電灯を点けることができますが
電気のない時代から考えると「明るく照らす」なんてすごいことですよね。
当店の店内だって入口以外に窓なんてないから
昼間でももし電気が点かなかったら真っ暗で何一つできません…
最近なんて私の目が悪いせいで電灯だけでは足らず
手元をLEDランプで照らさないとよく見えないほどですし…(苦笑)
何にせよ、簡単に電気が使える現在の環境に感謝ですねぇ
でも電気代のこれ以上の値上げは何とかやめてほしいところですが…

さてさて

カメラだって電池を使って電気を使います。
今回お預かりしている「オリンパスペンEED」は
その電池で動く露出計と連動して露出はプログラムオートで
設定されてシャッターを動作します。
シャッターそのものは機械式で電気を必要としませんが
露出計が動いていないと「光量不足」と判断し
シャッターロックがかかるので
実質的に電池を入れないと通常動作できないカメラです。
オート露出ではなくフラッシュモードにすると
シャッタースピードは1/15固定で露出計が動いていなくても
シャッターは切れますがこれで通常撮影を行うのは
少々難しいかと思われます。
今回のペンEEDも電池を入れて明るいところにカメラを向けても
露出計が動かない様子で
常に赤ベロ(光量不足警告)がファインダー内に出て
シャッターが切れない状態です。
この種のカメラではよくあるトラブルです。
その名の通りペンEEシリーズのデラックス版と言えるカメラですが
既存のペンEEシリーズとは構造もデザインも全く異なり
ペンDシリーズとも共通点はあまりありません。
「D」である所以ともいえる大口径レンズは
Fズイコー32mmF1.7ですが同じスペックの「ペンD3」搭載のレンズとは
また別設計のレンズなのだそうです。
シャッター羽根が絞り羽根を兼用するプログラムシャッターを搭載し
そのあたりは「ペンシリーズ」というより
同時期の35mm判コンパクト「35DC」に近い構造です。

露出計不動ということで真っ先に疑うのは電池室周りですが
今回の「EED」は電池室も一見キレイで
電池室内には腐食も見当たりません。
それでも電池室裏側は緑青でビッシリ…なんてパターンも多いのですが
今回は配線もハンダも大きな問題はなく導通もしています。
…となると疑われるのは露出計本体です…
EEDはファインダー内に露出計指針等の表示はありませんが
オート制御はいわゆる指針挟みこみ式です。
実はここまできてやっと気づいたのですが…
は、針がありません…(苦笑)
指針が折れてしまっているようです。
これでは露出計が動いていても常に光量不足と判断されます。
さらに針がないだけでなく露出計本体も断線まではいきませんが
内部の動作不良でまともには動作していない状態でした。
何が原因でこれほど露出計にダメージを受けているのかわかりませんが
こうなると露出計本体は中古良品と交換したほうが無難です。
今回は露出計の交換で対応していきます。
オート制御の精度調整や露出計調整は根本的に最初からやり直します。
今回はもちろん問題ないレベルに精度も出すことができました。
やはり分解してみないと中身の状況はわからないものですね。
シャッター周り整備・ピント調整、レンズ・ファインダー清掃等々を
行ない再組立てして仕上げていきます。

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