ニコンFGのカメラ修理

今日は「電気記念日」だそうですよ。
明治11(1878)年3月25日に
東京虎ノ門の工部大学校(現東京大学工学部)のホールにおいて
東京電信中央局の開業祝賀会が開催され
この席上、伊藤博文工部卿の発案により
工部大学校エアトン教授の指導で
日本国内で初めて電灯(アーク灯)の点灯に成功したそうです。
昭和2年から、この日を記念して3月25日を
「電気記念日」とし、先駆者の偉業をたたえるとともに
今後の新たな発展を誓う日としているそうです。
今日もあいにくの天気で朝から薄暗いですが
こんな日にもし電灯がなかったら
日当たりのない当店なんて全く何もできません…
今や電気や電灯があるのは当たり前になってしまっていますが
現在の日常の便利さに本当に感謝ですね。

さてさて

本日は「ニコンFG」のカメラ修理を行っています。
1982年発売のカメラです。
ニコン初のエントリークラスのカメラとして
発売された「ニコンEM」をベースに
プログラムオート、絞り優先オート、
マニュアル露出モードを追加搭載し
マルチモード機へと仕立て上げたカメラです。
ニコン機のプログラムオートは
通常レンズ側の絞りを最少絞りにセットして行いますが
それを故意に絞り値を変化させても
「プログラムシフト」と称してオート露出が行えるようになっています
これを利用してSS優先オート的に使用することもできます。
このプログラムシフトに対応するために
レンズ側の自動絞り連動レバーの動きを
絞り段数にほぼ比例するよう改善したAi-Sニッコールレンズへと
レンズ側もモデルチェンジしました。
それでも旧来のAiニッコ-ルでも
プログラシフトを可能にするため
ミラーアップ直前に絞り込み測光を行う瞬間絞り込み測光を搭載しています
本当にこのあたりは過保護というかユーザーを信用していないというか
この時代のニコンらしい部分だと思います。
シンプルなEMが国内市場で今一つの販売状況だったため
急遽開発されたフルスペック機とも言われています。
これだけ高機能満載となったせいで
上のクラスでもある「FE」を機能的には超えている部分もありますが
あくまでもベースは「EM」なので
機能以外の部分ではやはりエントリークラスの造りな部分もあり
華奢な部分も散見されます。
瞬間絞り込み測光を搭載した関係もあり
シャッター音(正確にはミラー駆動音)が他のモデルに比べると
少々独特でこれが何とも良いと言われることも多いようです。
(私も個人的にFGのシャッター音には何とも惹かれます)

電子制御満載なマルチモード機ということもあり
制御関連にトラブルがあると
修理不可能な場合もあるカメラです。
今回、お預かりしている「FG」は
ファインダー内LEDが明るさに関わらず「60」と「125」で点滅して
オート制御されない…という症状でお預かりしています。
「FG」では「EM」と同様にフィルムカウンターが「1」になるまでは
シャッタースピードが1/90固定となります。
これは露出モードがオートになっていて
レンズキャップをしている際にフィルムカウンターが「1」になるまでの
「空写し」の際にオートが効いて
無駄なスローシャッター制御になってしまうこと等を防ぐためです。
「EM」ではその際に露出計はオフとなっていますが
「FG」では1/90固定で切れていることを知らせるために
「125」「60」の同時点滅となります。
その制御が上手くいっておらずカウンターが「1」になっても
通常のオート制御に移行しないものと思われます。
フィルムカウンター連想のSW部の単純な接触不良かと思われましたが
それ以外にも接点の接触不良が何ヶ所かあるようで
SWの接触自体は悪くないのですが電圧不足に陥ってしまっているようです。
接触不良を起こしやすい接点はある程度把握しているので
そのあたりを中心に整備修理を行っていきます。

80年代の電子制御カメラなので
さすがに整備性は良くはなくかなり手間がかかります。
その上、静電気等の対策も行った上で
非常に慎重な作業が求められます。
電気的な不具合も対処していくのですが
機械的にもかなりシャッター羽根の動きが不安定なようです。
とりあえずメカニカルの1/90は切れていますが
シャッタースピードの精度がかなり不安定で
特に後幕の動きが悪いことが原因のようです。
おそらく劣化したモルトが入り込んでいるか
羽根に付着した油脂類等が原因かと思われます。
そのあたりの整備も並行してこれから行っていきます。

↓ をクリックすると「東京フィルムカメラ修理工房」のホームに戻ります。