日別アーカイブ: 2021年12月15日

ニコンEMのカメラ修理

今日は12月15日、12月ももう半分終わりますねぇ
何となくキリの良い日付だから
記念日もたくさん制定されているかと思いきや
そうでもなくて
めぼしいのは「観光バス記念日」くらいですねぇ
1925(大正14)年のこの日に
東京乗合自動車により日本初の定期観光バスである
「ユーランバス」の運行が開始されたのだそうです。
日本初の定期観光バスでしたが
路線バス扱いでもあり
途中の下車観光地から乗車した場合の運賃も定められていたということです。
当初のコースは「皇居前~銀座~上野」でした。
その後、経営不振により東京乗合自動車の遊覧自動車事業は
一旦休止に追い込まれましたが
新日本観光株式会社(現:株式会社はとバス)に譲渡され
同社の手によって再開されたのだそうです。
今のはとバスに繋がっていくのですねぇ
観光バスといえば…一時期私の故郷「呉」で行っていた
「ボンネットバスツアー」再開してくれないかなぁ…
もう一度だけ「呉市営バス」(現在は広電バスに譲渡されている)の
カラーリングのボンネットバスに乗ってみたいのですが…
おそらく企画されるとすれば春の気候の良い季節でしょうけど
もしやってくれるなら何をおいても駆けつけるのですが…

さてさて

本日は「ニコンEM」のカメラ修理を行っています。
1980年に当時のフラッグシップ「F3」と同時期に開発され
ほぼ同時期に発売されたエントリー機です。
外装デザインはF3と同じくジウジアーロによって行われ
今見ても非常に良いデザインで評価の高いカメラです、
ニコン初のエントリークラスのカメラでもあり
露出設定は絞り優先オート専用とし、割り切った機能の搭載となっています。
これが国内販売開始直後はそれまでのニコンファンに
いまひとつウケが良くなくて意外と国内販売では苦戦を強いられます。
そのため続く兄弟機「FG」ではフルモードフルスペックを搭載し
上級機のFEとほぼ変わらない機能を与えられます。
今となってはシンプルな機能やジウジアーロデザインが
再評価され国内中古市場でも非常に人気の高いカメラです。
このへんのマーケティングはその時代ならでは事情もあり
なかなか難しいですね。
今考えると圧倒的にEM人気でもおかしくないと思えるのですが…
ただし、輸出モデルは当時から非常に好調で
販売的にも成功を収めています。
絞り優先AE専用機ですから当然シャッターは電子制御ですが
メカニカルシャッター1/90を搭載し
例え電池がなくてもM90とバルブは機能します。
このあたりは非常にニコンらしいですね。
電池がなくてM90を使う場面なんてめったにあるものじゃないと思いますが
バルブ時に電池を使わなくても良いのは
夜景や星景写真を撮る方には非常に有効だと思います。
確かに元々のお値段也でチープな部分もあるのですが
使い心地の質感は意外と悪くなく
個人的にも好きなカメラのひとつです。

お預かりしている「EM」はしばらく使われてなく
保管されていたもののようです。
外観のコンディションは悪くないのですが
モルトの劣化が進んでいて
フィルム室内にもモルト屑が散乱していますが
ファインダー内もモルト屑だらけになってしまっています。
それからこれもモルト屑の影響かもしれませんが
シャッター羽根の動きが悪く
シャッタースピードの精度も出ていないようです。
羽根自体の汚れもあると思われますが
モルト屑がシャッターユニット内に入り込んでしまっているのも
悪影響になっていると思います。
加えて露出計の動きが非常に不安定です。
定常光にあてていてもファインダー内露出計指針が
上に行ったり下に行ったり踊っているかの如く激しく上下しています。
レリーズ周りの接触不良か
1枚目スタートSW部の接触不良かと思われます。
この時期のAE搭載機になると
1枚目をセットするまでの空シャッター時に
レンズキャップをした状態でもスローシャッターにならないように
カウンターが「1」になるまでは露出計もオフで
シャッターも一定速で切れるようになっています。
(EMの場合はM90)
この1枚目感知のSW部で接触不良が起きることも多いのです。
個人的には1枚が出るまではモードを「M90」にして切って
このSWは不要かとも思うのですが
万人向けと考えるとやはり必要ですかね…(苦笑)
この1枚目感知があると裏蓋を開けた状態で
測定機にかけづらいというこっちの不都合もあり(苦笑)
あまり好きではない機能です…

機能的な話はさておき
何にしても一通りの整備・清掃が必要な状況です。
エントリー機とはいえ80年代の電子制御機です。
整備の難易度は低くありません。
非常に神経を使いながらフレキの処理も行う必要もあります。
それでもまだニコン機は整備性は良い方です。
同じような絞り優先機でもX-7やOM10はさらに難易度が上がります。
いつも思うのですがこの時代のカメラと
50年代のレンズシャッター機なんかを比べると
「これが同じカメラ修理か?」と思うほど
アプローチから何から全く違うものになります。
古すぎるものももちろん難しいですし
新しいものも(それでも40以上年前ですが)違う意味で難しいですねぇ
なかなか一筋縄ではいかないものです。

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