今日は暦の上での「入梅」で
それに関連して「傘の日」だそうですよ。
毎年この時期になると
「ちゃんとした傘買おうかなぁ~」と悩むのですが
結局ここ数年は「ビニール傘」で済ませてしまっています(苦笑)
ここ数年はめったに傘を忘れてきたりすることはないのですが
ちょっとお高い傘を買ったときに限って
どこかに忘れてくるのですよねぇ…やっぱ買わない方がいいか…
きちんとした恰好で出かけなければならないような
機会もめったにないし…
でも傘に限った話ではないのですが
ちょっと奮発したものを持つと
それを大事に扱いますし
それに伴って立ち振る舞いも丁寧になるような気がするのですよねぇ
だから何でもかんでもお安くて使い捨てができるものではなくて
できる範囲でちょっと良いものを持ちたいなぁ…とは感じます…
あれ?全然「傘の日」の話ではなくなってしまいました(苦笑)
さてさて
本日は「ニッカⅢーF」のカメラ修理を行っています。
「ニッカカメラ」はかつて日本に存在したメーカーで
主にライカコピーを製造していたメーカーです。
最初のカメラは戦時中に
軍の命令によって製造した「ニッポン」です。
その後の社名にもなる「ニッカ」は
「ニッポンカメラ」の略なのですね。
1958年にはヤシカの完全子会社となり
それから徐々に吸収合併されていきます。
今回の「ⅢーF」はニッカとしては比較的後期のモデルで
1956年に発売されています。
その前年に出た「ニッカ5型」から
1/1000秒と視度補正レバー、裏蓋開閉を省略したモデルです。
「5型」がベースなのでダイキャストボディです。
ニッカらしいしっかりと造られたカメラです。
お預かりしている「ⅢーF」は1957年夏以降のモデルで
巻上がノブではなくレバーに変更されています。
やはり巻上はレバーの方が使いやすいですね。
ニッカのカメラは当時、日本光学(現ニコン)の
ニッコールを装着して発売されていました。
今回のお預かりの「ⅢーF」にも
ニッコールH.C5cmF2のレンズが装着されています。
まず問題なのはこのレンズが全く外れません。
少しだけ外れる方向に回せるのですが
ある程度からは全く回りません。
何か引っかかっているのか…と思うほどなのですが
L39ねじ込みマントなので何か引っかかるようなものもないはずです。
レンズが外れなくて作業的にまず困るのは
シャッター幕の確認が全くできないのですね。
ベースとなった「5型」であれば裏蓋が開閉できるので
目視できますが「Ⅲ-F」ではマウント側からしか幕が見えません。
そしてこの類のバルナックコピーはシャッター幕が劣化してる可能性が
かなり高いので幕の状態だけは最初に見たかったのですが…
ただし、シャッターは比較的調子よく動作しているようなので
それほど酷い状態ではないかとは思われます。
結局、レンズが外れない原因は単なるねじ込み部の固着でした。
ただし、かなり強烈に固着しており
相当時間をかけて根気よく少しずつ緩めていき
何とか外れました。ねじ込み部は入念に清掃し汚れ等を落とします。
シャッター幕は意外なほどに良好な状態でした。
これであれば幕交換を行う必要はございません。
ただし、シャッター精度は全く出ていなかったので
幕軸の清掃整備、巻上部の整備、スローガバナの清掃整備を行った上で
調整を行います。
ファインダー、レンズもかなり汚れ・カビがある状態でしたが
こちらも入念に清掃を行っていきます。
外観もできる限り磨き上げました。
少し駆動部の油が馴染むまで様子見を行っている段階です。
巻上、シャッターも非常にスムーズに動作しています。
レンズは後玉のコーティングに一部劣化がありますが
撮影に影響しないレベルだと思われます。
それ以外は非常にクリアに仕上がっています。
今回、トラブルには直接関係なかったのですが
内部から大量のフィルムの切れ端が出てきました。
バルナックタイプのカメラは
その独特のフィルム装填時に装填に失敗して
フィルムの一部がちぎれてしまうこともあるとは思いますが
一旦内部に入り込むと除去がなかなか難しいため
フィルム装填時は慎重に行っていただければと思います。
千切れたフィルムの切れ端がトラブルの原因になることも多いです。
これも裏蓋が開閉不可なため何か挟まっていても
気づかないことが多いのも原因ではあるのですが…
そんな感じで手間もかかるカメラではありますが
それでもバルナックタイプのカメラは
使っていて楽しいですし不思議な魅力のあるカメラです。
ご依頼者様には快調になったこの「ⅢーF」を
存分にお楽しみいただきたいと思います。
↓ をクリックすると「東京フィルムカメラ修理工房」のホームに戻ります。